13 Cits ページ15
未だに少し戸惑っている彼女を預かると彼はそのままバイトへと向かってしまった。
チャン君の背中を不安そうに見つめ続けている彼女は一人になる事が心細いんだろう。そんな彼女をキッチンカーに備えられている簡易階段へ座らせて一息ついて貰う事にした。
『唐揚げ食べる？』
「えっ、あ……えと、はい、」
『おっけ！じゃあ、まずはウチの事を知って貰う為に唐揚げ弁当を食べて貰おうかな〜？』
そう彼女へ告げて冷蔵庫から鶏肉とバッター液を取り出して鶏肉を油の中へ入れると今日も楽しく唐揚げが泳いでいる。
「あの、食べた事あります。……とても美味しいです、」
『えっ、食べた事あったの？』
「……はい、……ご飯を食べられない私を心配して弟が持って帰って来てくれるん、です」
『………ご飯を食べられない？』
ご飯を食べられない、今彼女は間違いなくそう言ったはずだ。思わず顔を顰めて彼女へ聞き返すとまた新しい情報が私の耳に入って来た。
「……ご飯は、母の気が向いた時にしか口にする事が出来ません。2日間抜き、なんて事もザラにあります。それ以外で私が食べられるのは弟から渡される唐揚げ弁当やパンのみです」
『………………』
「弟も、元々はバイトするつもりなんて無かったみたいなんです。母からお小遣いは貰えていたから、……ですが、私を見てバイトする事を決めたみたいで、」
『……あ、そ、そうなの？』
「俺がバイトをすれば、姉ちゃんにご飯も買えるし服とか日用品を買えるでしょ？そう言ってバイトを始めてしまったんです。……でも、母の心の拠り所の弟はそんなに多くの日数を働けないみたいで、」
『……………』
「弟のお給料は、ほとんど私のお世話で消えてしまっているんです、……小遣いも貰えなくなって給料も私に使っているので大学の友達と遊びに行く事は減ってしまって、」
『………え、そ、そんなに、酷い状況だったの、？』
ご飯も貰えない、学校にも行かせて貰えない、必要な日用品すら買い与えてくれない、
それはヤングケアラーというよりも、ネグレクトなのでは？
そんな事が頭によぎりながら唐揚げを油から取り出すとお客さんがやって来てしまった
"すみません、唐揚げ弁当一つ下さい"
『あっ、はい！ありがとうございます！』
彼女の為に揚げた唐揚げはお客さんの手へと渡ってしまった。
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
