11 Cits ページ13
目の前で繰り広げられる会話に目を見開いたまま床に視線を落として黙り続けていた
………母は、私が働き出したらお金を取り上げようとしていた？そんな事をされたら私は何の為に働くか分からないじゃない、
チャンはそれを見越して俺に渡せ、だなんて言ったの？
…………何なの、この二人。
私をとことん人間として扱おうとしない母とそんな母の言動までをも予想していたチャン。
私はチャンがいなかったら本当にこの地獄から抜け出せていなかったかも知れない。………一生チャンには頭が上がらないな
チャンは私の胸倉を掴むと口を開いた
「来い、バイト先の事でお前に覚えて貰わなきゃいけない事がまだあるんだよ」
『はい、』
そう言って立ち上がるとチャンは私を掴みながら振り返ると母に告げた
「明日、コイツをバイト先まで連れてくからね？夕方からコイツいないの覚えててね？」
「分かった。しっかり働かせて社会の厳しさ教えてやって」
「分ーかってるって！」
そう言うと私を引っ張りながらリビングから連れ出したチャンと部屋へと入るとチャンは私を座らせた
「腹減ってる？パン取ってこようか？」
『ううん、大丈夫だよ』
「そう？分かった」
そう言って私の目の前に座ったチャンは少し心配そうに口を開く
「……明日、俺本当にバイトなんだ。だから、唐揚げ弁当の店まで送ると俺はいなくなる」
『うん』
「そこからはそのオーナーさんと二人で話して欲しい。オーナーさんには俺から事情を伝えておくから」
『分かった』
「バイトが終わったら店まで迎えに行く。それまで待ってて？」
私が頷くとチャンも頷き、携帯を取り出すとどこかへと電話をかけたチャン。
「あ、Aさん、僕です、チャンです」
そう言ったチャンの言葉に唐揚げ弁当の人にかけているのに気付き声を出さないように黙り続けた
「……はい、明日姉を連れて行けそうなんですが、一緒に伺っても大丈夫ですか？でも、僕バイトがあるので途中から抜けないといけないんですが……」
そう伝えたチャンの顔は不安そうな顔からみるみる内に笑顔へと変わっていき私を見て頷いた
「あぁ、良かったですっ！そしたら明日お願いしますっ！」
そう言って通話を切ったチャンにありがとう、と伝えると私に笑いかけたチャンの笑顔を見て次は私が弟を守れる日が来るといいな、なんて思ってしまった
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
