9 Cits ページ11
「姉ちゃんっ！！仕事が見つかりそうだっ！」
『へ？』
夜職をしている母は夕方仕事に出掛けてしまい、家の事を済ませながらただただチャンを待ち続けていた。
母が仕事の日はバイトを休みにするチャンの帰りが遅くてどうしたんだろう？と心配しているとガチャッと開いた玄関から勢い良く走ってきたチャン。
嬉しそうな顔をしながら私の肩を掴んだチャンの発した言葉の意味が分からなくて首を傾げてしまった。
仕事が見つかりそう？チャンはバイトをしてるでしょ？
『……チャン、バイト辞めちゃうの？』
「はぁ？何言ってんの？辞める訳無いでしょ？」
『だって、仕事が見つかりそうって、』
「俺じゃ無いっ！姉ちゃんのだよ！」
『……は？』
「姉ちゃんを雇ってくれそうな人がいるんだよっ！」
私を雇ってくれそうな人がいる？
言われた言葉の意味を理解するのに時間がかかってしまった。
「いつも持って帰ってくる唐揚げ弁当の人！」
唐揚げ弁当？
「その人が俺達の事情を分かってくれた！」
私達の事情？
「姉ちゃんが、学校行ってないのも分かってくれて協力してくれるって！」
義務教育すら受けていない私を？
「一度……姉ちゃんと話したいって、！」
こんな私と、話したい？
『……へ、わ、私、仕事出来るかも知れないの？』
「そうだっつってんじゃん！」
『私、算数も出来ないし、難しい事話されても分かんないんだよ？』
「だから、それも理解してくれてるって言ってるじゃん！……行こうよ、姉ちゃん」
『え、』
「……会いに行こう？唐揚げ弁当の人に」
『でも、お母さんは？』
「へ、」
『お母さんは、どうするの？』
義務教育すら受けていない私が働ける場所なんて無い。母も私もそう思っているのに急に私が働く、なんて言い出せば怪しまれるかも知れない。
私が働くにはまず、母を納得させるか欺くのが必要だ。
チャンに問いかけると俯いたチャンは少しだけ黙った後、顔を上げて私を視界に捉えると力強い目で私に伝えた
「……大丈夫、俺に任せて」
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
