プロローグ A ページ1
小さい頃から母が大好きだった。
優しくて時に厳しい母は私と弟のスンチョルへ沢山の愛を注いでくれた。
そんな母が作る唐揚げがとても大好きで中学生の時に私はある夢を持ち始めた。
それは、母を超えるほどの美味しい唐揚げを作り販売する事。
スンチョルには腹を抱えて笑われてしまったけど。
そんな腹を抱えて笑っていたスンチョルはきっと仕事帰りにまたこのキッチンカーへ寄り私お手製の唐揚げ弁当を買って帰るんだろうな。
母を超えるほどの美味しい唐揚げを販売する、
そんな無茶な夢を中学生に持った私は高校生の頃から資金を貯め続けて約8年。キッチンカーの見た目、キッチンの性能具合などをオーダーして溜め続けた400万の貯金はあっという間に無くなってしまった。
営業許可証が交付され遂に営業開始した時には不安な気持ちでいっぱいだった。
美味しいと言ってくれるだろうか？売れるだろうか？そんな不安な気持ちを持ちながらの開業。
そんな私の不安な気持ちとは裏腹に評判が上がっていった唐揚げ弁当は今では常連さんもついてくれる程になってくれた。
まぁ、その内の一人がスンチョルなんだけどさ？……あの子、給料の1/5は私の唐揚げ弁当で消えてるんじゃないかな？
家族連れやサラリーマンの方やOLの方や学生さん、様々な人達が買ってくれるこの唐揚げ弁当は私の人生が込められている、そう言っても過言では無いかも知れない。
そして、週に2回ほどこのキッチンカーに顔を出してくれる大学生の男の子は今日は来るのだろうか？いつも笑顔でここの唐揚げが大好きだと伝えてくれる男の子。
唐揚げ5個と白ごはんを詰めるうちの唐揚げ弁当を小さいパックに分けて下さい、と言って唐揚げが3個と2個に分けられてご飯も半分ずつになってしまうお弁当を持って帰るその姿はいつも嬉しそうだった。
食べ盛りかも知れないのに必ず分けて持って帰る姿にいつも疑問を持ってしまうんだ。常連さんだし、今度来た時は小さい方のパックに唐揚げを一つオマケしようかな？
そんな事を考えながら少なくなってしまった鶏肉を補充していると聞こえてきた噂の男の子の声
「こんにちはっ！」
『チャン君、いらっしゃい！』
「お弁当一つお願いします！」
そう言って笑顔で告げる彼にいつもありがとう、そんな気持ちを込めて唐揚げを一つ多めに油の中へと潜らせた
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年2月11日 23時
