28 trick ページ29
『……私、騙されたの？』
「んー、そうなんじゃない？僕は軽傷だよ？」
『え、軽傷？』
「防刃ベストって言っても衝撃はあるからね。お腹付近に刃先も少し当たって切れちゃったし、思い切り突進されたからお腹を思い切り殴られたみたいな感じだよ」
『お、お腹切れたんですか？』
「あぁ、うん。って言ってもガッツリ刺さってはないよ。今日中に家に帰れるレベルだし、」
『……な、何だ……、』
大丈夫なんだ。
そう思うと、足の力が抜けていきヘナヘナと足が崩れその場に膝をついてしまった。
「……え、大丈夫？」
『あ、何か安心して、足の力が抜けちゃって、』
「ふふっ、安心したんだね？」
『もっ、もちろん、怖かったんですから。もう会えないかと思っちゃって、』
「あぁ、だからか」
だからか、なんて言ったミョンホさんに目を向けるとミョンホさんはベッドの上で少し移動すると私の脇を抱えてベッドへと座らせた
「大丈夫だよ、Aを置いていなくなる訳ないでしょ？」
『…………』
「僕だって、何も伝えてないんだよ？」
『へ、』
そう言って私を包み込むと私の側頭部に落とされた唇に目が泳いでしまった。
「まだ、家に帰るまで少し時間かかるから先に僕の家に帰っててくれる？」
『え、あ、はい』
「その時に伝えたかった事を聞かせて？」
『え……』
「僕も伝えるから、ね？」
そう言われ小さく頷くと私へと少し離れると軽く触れた唇に思わず頭を引いてしまった
『……なん、え？』
「ふふっ、なるべく早く帰るからね？帰ったらたくさんしようね？」
『……あ、…….え、あの、』
「ほら、行って？」
『は、はい……あ、あの、』
「ん？」
『ま、待ってます、ね』
少し身体を縮めながらそう伝えると優しく微笑みながら頷いたミョンホさんへ背を向けて病室から出た。
パタンッ
扉を締めて訪れたのはミョンホさんが無事だった安心感だった。良かった、無事で。本当に良かった。
それと同時に訪れたのは落とされた唇だった。
キスされちゃった。帰ったらたくさんしようね、だって。
思わず顔を両手で覆い緩んだ頬は元に戻ってくれずゆるゆるになったまま私はミョンホさんの家へと帰った
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年1月5日 20時
