25 trick ページ26
"お客さん、着きましたよ"
そう、声をかけられ窓の外を見てみるとそびえ立つ大きな病院。
お金を払いタクシーから降りて早足で歩き出すとチャニさんが男性と話しているのが見えた
『チャニさんっ！！』
そう彼を呼びかけるとこちらへ顔を向け、男性に何か話しかけた後、神妙な面持ちで私へ向かってくるのを見て思わず息を呑んでしまった。
………何で、そんな顔をしているの？いつものおちゃらけた雰囲気はどこに行ったの？
私の目の前に立ったチャニさんは目を伏せたまま口を開いた
「……ヒョンは5階の病棟にいるよ、503号室」
『チャニさん、ちょっと待ってよ、』
「…………」
『一体、何が…………』
そうチャニさんの肩を揺らしながら問い詰めると私の目も合わせずにポツリポツリ話し出した
"俺とヒョンは、今日事故現場へ行ったんだ。警察の方から気になる事があるから見て欲しい、そう言われて
事故現場は入れないよう、立ち入り禁止テープが張り巡らされていたんだけど、その周りには野次馬がいた。その野次馬の中に一人の少女が肩を振るわせながら立っているのが見えたんだ
何か思い詰めてるような感じだった。きっと、被害者である人の娘かも知れない、そう思った。……被害者には中学生の娘がいる、そう聞いていたから。
その子に注意はしていたんだ。何を起こすか分からない、そんな顔をしていたから。
でも、その子は急にテープをくぐり近くにいた警察官に向かって走り出したんだ。それに気付いたヒョンはその警察官の元へと走って行ってしまった。
彼女の手には小型ナイフが握られていて………
そのまま警察に突進していった女の子は理性を失っていたんだろうね。父親を殺されて、
その前に立って警察官を庇ったヒョンはそのまま…………膝から、崩れ落ちて……………"
『は、……はぁ？嘘でしょう？……』
「……これ、Aさんに渡そうと思ってて、」
『…………』
重苦しい息を震えながら吐いたチャニさんから渡されたのはミョンホさんがいつもかけていた粉々に割れた丸眼鏡だった
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年1月5日 20時
