24 trick ページ25
「もしもし、Aさん？」
『え？チャニさん？どうしたんですか？』
「あの、落ち着いて聞いてね？」
そう言ったチャニさんの声は少し震えている。
あの日、ミョンホさんの家に泊まった私は自分の湧き上がる気持ちに気付いた後ミョンホさんの顔を見れなくなりミョンホさんへ断りを入れて帰る事にした。
帰る前にミョンホさんから明日は現場入りしなきゃいけないから家に来なくてもいいよ、と言われ今日は家で綺麗に掃除をしようと実行中だったんだ。
朝起きてご飯を食べて掃除をしていた時に携帯から音楽が鳴り私に着信を知らせた。
名前を確認するとミョンホさんの名前。どうしたんだろう、と思いながら通話ボタンを押して耳に当てると聞こえた声はチャニさんだった。
ミョンホさんの携帯からチャニさんはかけてきたのかな？不思議に思いチャニさんの名前を確認すると彼の声は震えながら言葉を紡ぎ出す。
『落ち着く？って何ですか？』
「あの、い、今から言う病院に来て欲しい」
『病院？』
「……あの、ヒョンが、」
『ミョンホさん？』
「………ヒョンが、刺された、」
『は？』
一瞬、耳を疑った。刺された？
刺された？ミョンホさんが？…………刺された？
『え？……え、どういう、……え？』
「とりあえず、病院に……あ、えと、病院が……」
『……え？』
「…… カトリック大学校ソウル聖母病院ってとこ、」
『え、』
「と、とりあえず、早く……あぁ、車は危険だから、タクシーで」
『…………』
「あの、なるべく、早く来てね、」
カトリック大学校ソウル聖母病院？
そこは一体、どこなんだろう？ソウル？ソウルの病院？いや、待って、ミョンホさんは？
『……あ、あの、チャニさ、』
「へ、」
『ミョンホ、さんは無事、なんですよね？』
「……………」
『え？』
「とりあえず、早く来て」
『ねぇ、ミョンホさんは』
「手を、」
『え？』
「手を、握ってあげて、」
『………………』
「そしたら、大丈夫、だから、」
そう言って切れた電話の音は虚しく私の耳に響き続け頭の中が混乱してしまった
とりあえず、病院、
服を着替えてタクシーを呼び、カトリック大学校ソウル聖母病院、と呟くとタクシーはそのまま発進してしまった。
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年1月5日 20時
