22 trick ページ23
『ミョンホさ、』
「ごめんね、遅くなって」
私の目の前にしゃがみ込んだミョンホさんに縋るよう首に巻き付くと腰を引き寄せながら頭を抱えたミョンホさんに徐々に湧き上がる安心感。
私が時間をしっかり確認していればこんな事にはならなかったのに謝ったミョンホさんに湧き上がるのは罪悪感だった
『……ごめんなさい、』
「何が？」
『時間を伝えてくれてたのに……探すのに必死で気付かなくて、』
「ううん、大丈夫。身体冷たいよ？早くリビングに行こう。立てる？」
『…………』
足に力を入れようと未だにガクガク震えている足を床につけてみたけど震えた足は言う事を聞いてくれず、へにゃっと折れてしまった
「…………」
『あ、ごめんなさい、……電気をつけてくれたら落ち着くと思うので先に戻って』
「そんな状態で置いていける訳ないでしょう？」
そう耳元で囁くと腰に回っていた手は膝裏へと回り頭を抱えていた手は背中全体を包み込むと力を入れて私を持ち上げた
『……ごめんなさ、』
「大丈夫だって」
こんな華奢な身体でどこからそんな力が湧くのだろうか？私を抱え上げたまま歩み始めたミョンホさんの首に巻き付いて顔を寄せると私の頭に頬を寄せた。
ミョンホさんが姿を見せた時に溢れ出た安心感といつもは悪戯っ子のように私を困らせるのにこういう時に年上なんだなぁ、と実感してしまう。
階段を上がりリビングへ到着するとストーブの前に私を降ろしたミョンホさんは身体から私を離しその場を去ろうとした
「……え？」
『…………』
彼の服を掴んで動きを止めると少し驚いた後に、少し困ったように笑いながらしゃがみ込み私へと視線を合わせるとまた甘い声が耳に突き刺さる
「どうしたの？」
『どこに行くんですか、』
「寒いかと思って紅茶でも淹れようかなって、」
『そんなのいらない、』
「…………」
『いらないから、』
未だに震える手で彼の服を掴み続けると小さい笑い声が聞こえた後に暖かい手が私の手を包んだ。
「……一緒に暖まってようか？落ち着いたら一緒に飲もう？ね？紅茶の中にチョコ牛乳入れてみる」
『……はい、』
そう返事をすると足の間に私を収めて全身を包み込んだ温もりに安心感が募ったのかだんだんと遠のいていく意識。
最後に感じたのは後頭部に落ちた唇の感触だった。
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年1月5日 20時
