21 trick ページ22
扉の前で佇む事数分が経った頃にようやく気持ちを落ち着かせようと頭が働き出した。
実験場の隅っこへと歩き膝を立てながら座り込んで自分を安心させる為に頭を巡らせた。
ミョンホさんは21時前に帰ると言っていた。今が20時だとしたら後一時間程待てばいいだけだ、ただそれだけ、
でも、もしミョンホさんが私がここにいるのを気付いてくれなかったら？朝の8時までこのまま？
いや、気付かないはずはない。だって車が置いてあるし靴も玄関先に置いてあるんだ。さすがに分かるはずだ。
体を丸め時間が過ぎるのを待っていると地下だからだろうか？段々と冷え出してきた自分の体を抱きしめた時だった。
実験場内の電気が全て消えた
『……え、な、何？何で？』
もしかして停電？いや、まだ雷は鳴ってない。………オートロックがかかった後勝手に電気が消える設定？
嘘でしょ？こんな真っ暗闇の中過ごさなきゃいけない訳？
『……あ、……で、電気、』
そう思い立ち上がったが中は真っ暗で電気の場所が見えずスイッチがどこにあるか分からない。
それに下手に動き回って薬品などに手が触れても大変だ、落としたりしたらきっと怒られてしまう。
ヘナヘナとその場に座り込みもう一度体を抱きしめた瞬間近くに落ちたであろう雷の音が私の耳へと襲いかかる
『……っっ！！』
思わず耳を塞いだ。
まだ、雷が鳴っていなければマシだったのに。どうしてこんなタイミングで、
徐々に襲いかかる恐怖に頭は支配されていき目の前がぼやけ出した。
早く帰ってきて、ミョンホさん
膝から顔を上げて少し考えた。今、何時だろうか、
10分しか経っていない気もするし、1時間以上経っている気もする。
腰はくだけ、もう立ち上がる事も出来ない。ふいに襲いかかる雷は私を動けなくさせてしまった。
絶望感から生気が抜けただただ無言でミョンホさんを待ち続けていた時だった。
ガチャンッ
『……は、』
実験場内に響き渡った音の方向へと目をやると久しぶりに漏れた灯り。逆光で見えないが人影の姿を見て小さく息を吐いた。
懐中電灯で私を照らすと名前を呼びながら近づいてきたその人が救世主に見えた。
会いたかった、あなたをずっと待っていた。ぼやけた視界のまま彼へと手を伸ばした。
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年1月5日 20時
