20 trick ページ21
"……A、大丈夫？"
そう、優しく問いかけたミョンホさんの声はやけに甘く聞こえた。
大丈夫な訳がない。絶望だった。
長い資料の整理が終わり、紙を持ちながら実験場へと向かって色々なものが置いてある棚の前に立つと見た事もない物が並んでいた。
どれがどれで分かったもんじゃないし、どこら辺に何が置いてあるかも分からない。
思わず漏れた溜め息と共に入れ物に貼られた名前のラベルを一つずつ見ていき、溢さないように慎重に大きなカゴへと入れていくと雷が鳴り響いた。
『……っっ！！！』
心無しが雷が近くなっている気がする。もう嫌だ、早く探してここから出よう。
そう思いながらラベルを確認していた時だった。
ガシャンッ
『……え、』
そう扉から音が聞こえて扉へと目を向けた。何の音？ミョンホさんが帰ってきた？でも帰ってきてもこんな鮮明には聞こえない。
未だに何の音か理解出来ずにカゴを床に置いて扉へと近づくと何も変わった様子は無い。不思議に思いながら外を調べようとドアノブを押した。
ガンッ！
『え、』
扉が開かない。え？何で？そう思いながらドアノブを押し続けたがビクともしない。
何故？どうして？軽いパニックになりながら扉を押しているとふと思い出したミョンホさんの言葉。
"これから、夜の20時以降は実験場に入っちゃ駄目だよ？"
"閉じ込められたら、朝の8時になるか僕が開けるまで出られないからね〜"
『……あ、う、……嘘、』
顔が青くなっていくのが分かった。
そうだ、20時以降はオートロックがかかるんだ。鍵がかかったって事はもしかして今20時なのか？
……私は出られない？
ドクンドクンと早まる鼓動と浅くなっていく息。こんな気味悪い場所で雷が鳴り響く中私は一人ぼっち？
絶望という名の気持ちが私へと押し寄せ激しく泳ぐ目は全然落ち着きを取り戻しちゃくれなかった。
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年1月5日 20時
