19 trick ページ20
あぁ、ドキドキするなぁ。
そんな事言ってるのをAに聞かれたらきっと怒り狂うかもしれない。
チャニの家から出て吹き荒れる雨と光る雷を尻目に車を走らせ続けて30分程でついた家。
玄関を開けると家の中から物音は何もしない。少しの願いを込めながら廊下を突き進んでリビングの扉を開くとリビングはもぬけの殻だった。
あぁ、最高じゃん。20時以降は入っちゃ駄目って言ったのにさ？でもあの時君は小麦粉の掃除をしてたから聞き流してたっけ？
どうせ、そんな時間に入る事も無いって思ってたんだろう？しっかり頭の中に入れておかなきゃ駄目じゃん、馬鹿な子。
無意識に上がった口角と共に眼鏡のブリッジを上げて実験場の鍵を持ち懐中電灯も持って地下へと下っていく。
はやる気持ちは僕を急かし、実験場の鍵を差し込んで回すとガチャン、という音が聞こえた。
ここは、実験場にいるなんて予想していなかった風を装うか？優しさを全面に出せば彼女も安心しきるだろう。
目を閉じながらドアノブに手をかけてドアノブを引くと、真っ暗闇の実験場は何も見えない。
彼女はどこにいるんだろうか？
懐中電灯で中を照らし隅から隅まで照らしていくと隅っこに丸まっている姿を発見した。
子供のように丸まっている姿はこちらを見つめていて、その目は恐怖に怯えきりやっと助けが来てくれた。そんな目をしている、と言った所だろうか？
"ミョンホさん"
そう口が動いたのが見えたが声が出ていない。
そんなに怖かったんだね？もう大丈夫だよ、今すぐ僕がそっちに行くからね？
上がりそうな口角を抑えながら彼女の元へと歩み寄るとだんだんと見えてくるAの顔。
恐怖からか腰が抜けて立ち上がれず僕を見つめ続けるその瞳は濡れていて睫毛が震えている。
「……A、大丈夫？」
頬に手を寄せると僕の手を掴み未だ声を発さない彼女。
あぁ、そんな目で見つめないでくれ、
頭がおかしくなりそうだ
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年1月5日 20時
