プロローグ ページ1
「ヒョンってAさんが好きなんでしょ？」
「は？」
手榴弾って簡単に作れる？紙を持ちながらそんな事聞いていたくせに急に変わった話に思わず眉を上げると眼鏡がずれ落ちた。
「あっ、手榴弾って地上と水中だとどっちが危険？」
「水中」
「ふぅん、水中なんだ。相手は元軍隊かな？」
「さぁ？そうなんじゃない？」
「あっ、吊り橋効果って知ってる？」
「は？」
また、戻った話に思わず目の前にいる奴に目線を向けた。話がコロコロ変わるよね、この天才君。
「知ってる？吊り橋効果」
「まぁ、聞いた事はあるけど」
「恐怖を感じるドキドキと、恋愛のドキドキって似ているんだよ。って事は上手くやれば恋をさせる事も可能なんだ」
「ふぅん」
「ちょっと、ヒョン何ぃ〜？興味ないふり〜？」
「別にそんなんじゃないよ」
僕は、この子の目が嫌いだ。こっちは、アドバイスなんて求めちゃいないのに勝手に人の目を見透かすように見つめ続けた後、心を読み取ってしまうんだから。
あぁ、目を合わせたのは間違いだったな、
「まぁ、効果は期待できるよ？実験して証明されてるし？」
「実験？」
「あぁ、本当にその言葉に弱いね」
目の前にいる男は笑いながら、その実験の内容を話し始めた。
「頑丈な吊り橋Aと不安定な吊り橋Bに男を一人ずつ渡らせるのを計三回行ったんだ」
「…………」
「ゴール後には女が一人立っていて、何か質問などあればお電話下さい。そう言って番号が書かれたメモを全員に渡す」
「…………」
「何人から、かかってきたと思う？」
「Aは0、Bは3」
「……何だ、知ってんじゃん」
そう言って少しつまらなそうにしたチャニを横目で見ながら声をかけた。
「……そんな事やられすぎてチャニの助手も落ちちゃったの？」
「え〜？」
楽しそうに笑ったチャニはひとしきり笑い終わると僕の方へと視線を向けた
「落ちたんじゃない、落としたんだよ」
「ふぅん」
「あ、やばっ！電話！俺もう戻らなきゃ！じゃあねっ！」
そう言って電話に出ながら慌ただしくバタバタと出ていくと家の中は静かになってしまった。
「……吊り橋効果、ねぇ」
鉄の扉を開けて階段を降りていくと地下に広がる専用の実験場。
「吊り橋効果だって、A」
呟いた僕の言葉は地下空間に広がって響き渡るとそのまま声は空間の中へと消えていった
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作者名：ノルン
| 作成日時：2024年1月5日 20時
