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「あ、あの……それでは僕は何てお呼びすれば……」
"スングァン君の方が年齢下なんでしょ？先輩は駄目なの？"
「れ、歴は僕の方が上なんですが……あっ、ヌナとか」
"何それ、本気で言ってたりする？"
「まっ、まっさか〜！冗談ですよっ！」
笑いながら発した声は楽しそうに笑っちゃいない。
そうだよね、名前駄目なのにヌナが通る訳ないよね。え？先輩って呼ばなきゃいけないの？
いや、ここは大人しく従っていた方がいいだろう。相手は何てったって無愛想王子に、副社長だ。
彼の権力でこんなへっぽこ清掃会社は捻り潰される可能性もあるんだ(？)
「先輩ですよねっ！普通は！はい！先輩で！はい！是非、先輩でよろしくお願いします！」
"うん、ありがとう。話を分かってくれる子で良かったよ"
「い、いえ……あっ、あはは」
"あ、あと、妹が世話になってるよね？毎回大変でごめんね？まぁ頑張って。それじゃ"
「えっ、えぇ！？ちょ、あのっ！」
声をかける暇も無く無情にも電話は切られてしまった。な、なんて身勝手で話を聞かない人なんだっ……！
こりゃあ毎回大変だろうなぁ………
か、鞄は大丈夫なのだろうか？いや、副社長の家に泊まってるから置きっぱなしなのか。
そう納得して朝に清掃を頼まれている雇用主の家へと向かった。
その後、分かった事は泊まってはいたが裸なんかで寝ちゃいなかった事、付き合っていない事、告白もどきはされた事だった。
げんなりしながら理由を話す先輩を見て、心から同情した事と兄妹共々、タイプは全く違うがキャラが濃い、というのはその日に分かった事だった。
「そういえば、副社長の事ジョンハンさんなんて呼んでましたっけ？」
『そう呼ばないと振り返らないんだよね、あの人』
「あぁ、何か想像出来るかも。大変そうですね」
『スングァン君はどうなの？マリー・アントワネット』
「あぁ、今日は風呂掃除させてくれって言われてやらせてみたらびしゃびしゃになってましたよ。」
『あぁ、何か想像出来るかも。大変そうだね』
お互い顔を見合わせると無意識に出てきた二人分の溜め息は事務所全体に広がってしまった。
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作者名：ノルン
| 作成日時：2023年12月5日 18時
