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「紅茶、出来ましたよ？」
『………ありがとう、』
目の前に紅茶を置くと紅茶には口をつけずにソファに座り込んだまま顔を上げないAさん。
………随分とへこんでるな。大丈夫かな？
慰めで肩を軽く叩いてやり、まだかけていない場所へと掃除機をかける事にした。
リビング、キッチン、廊下、Aさんの自部屋、脱衣所、玄関先、一通り掃除機をかけ終えてリビングへ戻ると未だに項垂れたまま紅茶にも口をつけていないようだった。
「…………」
掃除機を充電器へとセットして落ち込んでいるであろうAさんの隣へと腰を降ろした。
「Aさん、元気出して？ねっ？」
『…………うん、』
「失敗は誰にでもありますよ？やってみよう、っていう気持ちが大事なんですから！……ね？」
『…………うん、』
何故、僕が慰めなきゃいけないんだろう………
でもこんな落ち込んでいる人を放っとける人なんていないだろう、多分。
「だから、紅茶飲んで？冷めますよ？」
『……うん、』
そう言って、どこの外国で買ったんだ？と聞きたくなるようなお洒落なカップを差し出すとカップに目を移しカップを受け取ると口を開いたお嬢様。
『……私、本当に何しても駄目なのね』
「え？」
『あんな簡単な事も出来ないなんて……』
「…………」
確かに小学生の方が上手に仕事出来るかも知れない。
危うく口に出てしまいそうな言葉を必死に飲み込み口を真一文字にした。傷口に塩を塗るべきでは無いな、うん。
『……私はただ、役に立ちたいだけなのに、』
「…………」
『スングァンに迷惑をかけてしまうなんて、』
「…………」
『これじゃあ、お家から出して貰えないのも分かる気がする』
「え？」
家から出して貰えない？
『私ね、お父様とお兄さんから、お前は働くな、その方が社会の為になる。家に篭って花嫁修行をしておきなさい、って言われたの』
「あ、あぁ……………」
その選択肢はあながち間違ってはいないと思うけど。
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作者名：ノルン
| 作成日時：2023年12月5日 18時
