ミセス戯言の誘惑 (ページ4)

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『だから、私もお手伝いするっ！』

そう言って腕捲りを始めたAさんはとてもウキウキしているようで目がキラキラしていた。

こんな目をされちゃ断るに断れないじゃないか。

『ねぇ！良いわよね？』

嫌だ、仕事が増えそうだ

「もっ、もちろん……ありがたい、です」

思ってもいない事をまた声に出してマスクの中で口角をヒクヒクさせながら考えた。簡単な掃除で済ませられて、まだ掃除していない所はどこだ？

そう考えた時にとある場所が思い浮かんだ。

「お風呂？」

『お風呂？お風呂掃除ね！？』

「まぁ、して貰うとするなら……ですが」

『大丈夫よっ！任せて！お風呂掃除やってみたいわ！』

やってみたい、か。全然任せられないなぁ。でも、やって貰う事はとても簡単だ。

これ位なら出来るだろう。

「それじゃあついてきて下さい」

『分かった！』

そう言って僕の後ろにピッタリとくっつくお嬢様を横目にバッグからスプレーを取り出して脱衣所へ入って行った

棚からスポンジも取り出してお風呂の扉を開けてAさんへ振り向くと何故かワクワクしている彼女へと声をかけた

「いいですか？まずは、浴槽にこのスプレーを吹きかけて数分待って下さい。」

そう言ってスプレーを手渡すと大きく頷いた

「その間に床へスプレーを吹きかけてこのスポンジで床を磨いて？」

そう言ってスポンジを手渡すと大きく頷いた。子供みたいだなぁ。

「で、磨き終わったらお湯で洗剤を流して完了ですよ」

『え？それだけ？お風呂掃除ってとても簡単なのね』

それだけな訳がないだろう。カビ取りにカビ避け、排水溝の掃除やパッキンの取り外し。本当は今日やるつもりだったけど週に一度しているし次来た時にすれば大丈夫だろう。

そんな事Aさんに出来る訳が無いだろうから任せるなんて無理難題だし。

僕は小学生でも出来る事しか教えてないよ？

「他にもありますよ！でもそれは、おいおい……ね？」

『分かったわ！』

そう言ってお風呂場へと入って行った彼女を見送りキッチンの掃除の続きを再開した。

　
　
　
　
　
　
　
　
　
これ位なら出来るだろう。そう思っていた僕は彼女を少し侮っていたみたいだった。
　
　
　