22 effort ページ23
そう言って額に手を置いた副社長。
いや、だから応援してたじゃん、頑張ってねって。そしたら怒られたんだよ
「あいつはさ、」
「え？はい、」
「その好きな人とやらに喜んで貰いたくて頑張ってたんだよ」
「はい、知ってます。謎の物体をずっと食べさせられてたので」
「その喜んで貰いたい相手が本当に誰か分からない訳？」
「え」
「それっぽい事、あいつから言われてない？絶対言ってそうなんだけど。馬鹿だから」
「………そ、それっぽい事？」
"早くスングァンの喜ぶ顔が見たいのっ！"
ホットケーキを作ってくれた日の言葉を思い出して顔がどんどんと青くなっていってしまった。
「……え、………えぇ？」
「え？何か分かった？」
「いやぁ、無い無い！そんなはず無いですから！」
「……俺別に何も言ってないじゃん」
え、Aさんの好きな人って…………え？
え、僕は実験台じゃなかったの？え？
激しく目が泳ぎ始めて頭の中が大混乱になって訳が分からない事になってきてしまった。
「誰か分かった？じゃあまた会えたらさっさと謝る事だな。んで、うちのを早く返して」
「ま、また会えたらって、僕はもう顔も見たくないなんて言われてしまって……」
「会える会える、絶対会えるから」
「な、何でそんな事分かるんですか、」
「俺と、お前で言う先輩にしか分からない事もあるんだよ」
そう言って楽しそうに笑った副社長をただただ呆然と見てしまった。
「……まぁ、会える会えないかはあいつの頑張り次第だよ」
「え？、」
「まぁ、楽しみに待っとけよ？」
そう言って僕の頭に手を置いた副社長の顔は妹を大切に思っている。そんな顔をしていた。
この人もお兄さんなんだなぁ、
「ま、俺からはそれだけだよ。もう掃除終わったんだろ？」
「え、あ、はい……」
「なら、今日はもう帰っていいよ」
「あ、はい……それじゃあ失礼します、」
そう言って小さいバッグを持ち上げて手を上げる副社長に頭を下げてその場を後にした。
いつも清掃が終わると何かしらの物体が出ていたのに出て来なかった事に少しだけ寂しさを抱えながら帰路へと着いた。
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作者名：ノルン
| 作成日時：2023年12月5日 18時
