ミセス戯言の誘惑 (ページ1)

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プロローグページ1

　
　
　
　
　
　
　
今日も僕は、清掃会社の規定に従い青と白の制服に青い帽子を被り小さなバッグを持って目的の場所へと向かう。

あぁ、憂鬱だよ、あなたに会うのは。

見えてきたのは厳重に厳重を重ねた高層マンション。こんな所に住めるなんてすごいよね？うちのアパートとは大違いだ。

エントランスに設置してあるインターフォンを押すと可愛らしい声が聞こえてきた

「スングァンです」

『はぁい！今、開けるわね？』

可愛らしい声で返事をした後はウィーンと開かれるエントランス。

中を進みエレベーターに乗りどんだけ上がるんだよ、なんて毎回思ってしまう程の階層につき玄関先まで歩いていく。

さぁ、着いてしまった。今日も来てしまった。

玄関のチャイムを鳴らして少し待つと玄関の扉が開き中から出てきたのはお目目がクリクリしていて小動物のような可愛らしい女性だ。

問題が無ければ淡い恋心なんて抱いていたかも知れない。

　
『こんにちはっ！スングァン！』

こんにちは、Aさん

『早くスングァンに会いたかったの！』

僕は、少し遠慮したかったよ

『今日はね？いつも頑張ってくれるスングァンにオヤツを作ってみたの！』

あぁ、だからエプロンなんだね

『頑張って作ったから食べてちょうだい！』

全力で遠慮したい。君は何もしないでくれ。

そう心の中で会話をしたが口には出せない。マスクの中でヒクヒクと引き攣る口元は僕の気持ちを表してくれているみたいだった。

「た、楽しみだなぁ……な、何だろう…？」

心にも思っていない事を発するとすごく嬉しそうに笑い、本当！？なんて言い出した。

嘘だよ、微塵も思っちゃいない。

『なら、スングァン！早く入って！早くスングァンの喜ぶ顔が見たいのっ！』

そう言って僕の腕をグイッと引っ張った後は、背中を向けてリビングへとルンルンで歩き出してしまった。

「……………」

僕達は最近、ハウスキーパーと雇い主の垣根を超えている気がするんだよね。

　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
僕は、マリー・アントワネットの世話係じゃない。
　
　
　
　