43 Ugh! ページ44
『おかえりなさいませ』
「え、何?出迎え?」
『まぁ、一応。あなたも次期社長様なので』
「何か新婚みたいだね」
『何、馬鹿げた事を。』
「…………」
そう副社長へ吐き捨てるように言ってリビングへと戻っていき掃除道具を持ち上げるとすぐ後ろにいた副社長から声がかかった
「え、帰んの?」
『はい?当たり前じゃないですか、何言ってるんですか』
「清掃会社の事務所まだ開いてんの?」
『……………あ、』
忘れてた。タイムカードはスングァン君に連絡して切って貰ってはいるが事務所自体に連絡をしていない。
事務所が閉まるのは22時だ。そして、その事務所に私の服やバッグ達がロッカーの中に入っている。
バッグがロッカーの中に入っているって事は、だ。財布は事務所の中で眠っている事になる。つまり、帰れない。
『やべぇ、帰れねぇ…………』
「あ〜あ〜、残念だねぇ〜?」
呆然としている私とは裏腹に楽しそうな副社長に目をひん剥いてしまった。
『………何でそんな楽しそうなんですか?』
「別に?もうさ、仕方ないんだから泊まってけば?」
『いえ、結構です。今から帰るのでタクシー代をお借りしてもいいですか?』
「家の鍵、持ってんの?」
『………………』
そうだよ、財布も家の鍵もバッグの中ではないか。帰ったところで家の中にも入れやしない。
『………あの、副社長』
「ん?」
『私、家に帰れないんですが、』
「うん、知ってる」
『もし、ここに泊まったとしてもスーツに着替える事も出来ませんが……』
「………あー、」
二人の間に漂うやってしまった感。全ては副社長がもっと早く帰ってきてくれれば済む話だったんだけどね。
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作者名:ノルン | 作成日時:2023年12月1日 1時