4 Ugh! ページ5
「君、初めてだよね」
『はい』
「今の所入って欲しくない部屋、触って欲しくない物は特にないよ。終わったら一言声を掛けて貰えればそれでいいから、それじゃ。」
バタンッ
『………………』
そう言って部屋の中へと篭ってしまった副社長。
誰だ、あれは。
無機質で淡々と話し、使っていい掃除道具も教えて貰えないなんて。何と不親切な雇い主なんだ。
それに、あなた会社ではニコニコとして社員に困ってる事は無いか、とか自販機の前で社員に会ったら奢ったりする程、優しい人では無かったのか?
猫を被ってたのか?まぁ、被らなきゃ会社ではやっていられないか。
彼の対応に何となく納得しながらリビングへ進むと掃除機を見つけ掃除機をかける事にした。
その後はマニュアル通りに全て作業を進めていき約2時間かけて全ての場所の掃除を完了させて残った部屋は副社長が入っている部屋のみとなってしまった。
副社長が入っていった部屋へと進みノックをすると、どうぞと声がかかり一声をかけて扉を開けると目の前に飛び込んできた副社長の姿。
その姿は片手で頭を支えながら机に肘をつきノートパソコンをガン見している横顔は眉間に皺が寄っていた。
会社の事を考えているのだろうか、意見も何も貰えないのに考えなきゃいけないのは大変だな。そんな事を考えていると副社長の口がお開きになった
「……なに」
『あ、全てのお部屋の清掃が完了致しました。残りはこちらのお部屋なんですが……』
「……あぁ、」
そう言ってノートパソコンを閉じこの部屋から出て行こうと私の横を通り過ぎようとした時に頭を下げた時だった。
「………ん?」
『……え、』
私の方へ振り返り私の姿を凝視しだした副社長。
何だ、そんなに見つめないでくれ、バレそうだ。
『……あの、何でしょうか』
「……いや、何もない」
そう言って部屋から出ていった副社長を見送るとポツン、と取り残された部屋の中の清掃を開始した。
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作者名:ノルン | 作成日時:2023年12月1日 1時