ダリアのバウムクーヘン

31 betray ページ32

　
　
　
　
　
　
【SEUNGCHEOL SIDE】



　
「………….幸せになれよ？」


『……….はい』




そう返事をした彼女は少し弱々しく笑いながら頷いた。



幸せになれよ？なのに、キスをした？



未だに呆然としているAは何を思い何を考えているのだろうか。



「…….お互い、嫌いとか気持ちが無くなって別れたんじゃなかったんだな」


そう言うとAは節目がちに少し微笑みながら頷いた。



そんな顔を見てAとスニョンの気持ちはまだ向き合っているんじゃないか？そんな事を思ってしまった。








Aの気持ちに気付き始めて想いを必死に隠そうとしているAの姿。


どんな事も一生懸命な所。


覚えなくてもいいのにカクテル言葉を覚えようとしている所。


お客さんを惹きつける不思議な魅力。


お客さんを観察し、その人ごとに変わるセンスある話術。





俺も惹かれるのに時間はかからなかった。彼女を幸せに出来るのは彼女が好きな俺だろう、そう思っていた。





…………でも、本当にそれは正解なのか？本当に彼女を幸せに出来るのは俺なのだろうか？








それでも俺は………………………






「A」


『……はい』


「話してくれてありがとう」



そう言って彼女を抱きしめるとAは胸に頭をコテンと置いた



『……こんな話してごめんなさい。』


「ううん、大丈夫だよ。気にしないで」


『……私が好きなのはスンチョルさんだけです』



………君はそう言うだろうね



「分かってるよ、ちゃんと分かってる」


『……永遠にあなたのものです。』


「……………」


『あの時のカクテル言葉に嘘はありません』




そう言ってしがみついたAをきつく抱き寄せ頭を寄せた



「………分かってるよ」


『スンチョル…….さん、』


「ん？」


『だ、抱いて頂けません、か？』


「は？」


『だ、駄目……ですか？、』



きっと、スニョンを忘れたい。そんな気持ちでいっぱいなんだろう。




それとも俺への罪悪感だろうか。




彼女の気持ちは薄々勘付いてるはずなのに。





　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　







「………もちろんいいよ」






俺は卑怯者だ
　
　
　
　
　

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