百三十七話。 ページ38
Aside
「寺田さん、陽太は！」
喉が痛くなるほど叫んで、痛みはすぐ消えた。大きい声だったのか、辺りは静かになった。
でもここは病院だから。
こんなこともしょっちゅうなのか、すぐに少しざわざわとしたいつもの感じが戻っていた。
「こっちよ、ICUにいるの。」
そう言われ、案内されるままについていった。寺田さんは今まで仕事をしていたのか書類をたくさん持っていた。
ICUに行くまでに沢山の人とすれ違った。
私が治せそうなものから、きっともう手遅れなものを抱えた人まで、たくさん。
私の超回復だって万能じゃない。
治せないものも、山のようにある。
そして、その多くが難病と呼ばれるものだったりする。
今まで、リカバリーガールと一緒に何度か病院での実践をやってきた。
治せない病気はたくさんあるから、そういうのはバレないように避けている。
別にバレたって問題はないんだけどさ。
無駄な期待ほど、要らないものはないから。そんな必要ない希望をそういう人に与えたくないだけで。
「ここよ。
あの奥のベッドが、陽太くんのベッド。」
「…ありがとうございます。」
奥へと足を進めると、私の目にはたくさんの病状や怪我の様子が見えた。
傍らでは手遅れになりそうな人がいて、傍らでは回復しつつある人がいる。
そして、私は救えない学生。
医師免許も持っていないし、ルールを破るつもりはない。こう言うので目立っては奴らとの契約に反するから。
こうして私は今日も、見殺しにしていく。
「…お姉さんですか。」
「はい。
陽太は大丈夫ですか。」
「今は落ち着いています。ですが、やはり、いつ悪化してもおかしくはないでしょう。
もう、何年も同じことを言っていますが。」
ここに来て、もうすぐ6年目になるだろうか。
その期間、同じことを聞き続けた。
あの場所が酷すぎた。彼処でなく、違う場所で生まれていたらもしかしたら違っていたのかもしれない。
そう考えると、胸くそ悪くなる。
「…ええ、分かっています。
今年の夏こそ、移植をお願いします。」
「…、そうですか。」
「もう少し、もう少しだけこの子の命を伸ばしてください。お願いします。」
もう、これ以上待つことは出来ない。
陽太も、もう限界だろう。
敵連合のところでためたお金で、なんとかするしかない。
何に代えようとも。
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ミナミ(プロフ) - 佐々さん» ありがとうございます！相澤先生かっこいいですよね、私も推しなのですごく分かります！褒めていただけて嬉しいです！これからもよろしくおねがいします！ (2021年6月24日 18時) (
レス) id: f5a254d1c8 (このIDを非表示/違反報告)
佐々 - 相澤先生推しなのでとても嬉しいです！夢主の気持ちの揺らぎ方がとってもうまく書かれていてすごいです！これからも頑張って下さい！！ (2021年6月21日 19時) (レス) id: 664e728fec (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - サキさん» どうもありがとうございます！不定期ですが、何卒宜しくお願いします！ (2021年6月7日 17時) (レス) id: f5a254d1c8 (このIDを非表示/違反報告)
サキ - 文章力があり、とても羨ましいです！！更新応援してます！ (2021年6月6日 13時) (レス) id: 9e2ae1981f (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - ありがとうございます！更新遅くなりましたがこれからもどうかよろしくおねがいします！ (2021年5月30日 21時) (レス) id: f5a254d1c8 (このIDを非表示/違反報告)
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