百三十四話。 ページ35
Aside
砂の中を泳いでいるようだと、よく思う。
カラカラで、水も飲めないような体も浮かないようなところで沈まないように、前に進むように必死にもがく。
もがいて、もがいて。
ようやく辿り着いたと思ったら、そこはただただ広がるばかりの砂地だった。
どれだけ頑張っても、前に進まない。
終わりが見えない。
どこにいるんだろうと、思うんだ。
地面を蹴って、走る。
ただひたすらに前を見て、一秒でも早くつくことを祈りながら硬い地面を蹴る。
息苦しさは感じられない。
と言うか、生まれてこの方それを感じたことはなかった。
この先も、きっとない。
それでもなんだろう。
お茶子ちゃんと話していると、感じないはずの息苦しさを感じる。
こういう、走ったときに感じるであろうものでなくて。
首を絞められるような、水の中に沈められるかのような、それこそ…砂の中でもがくような息苦しさを。
一番イヤな殺され方は、生き埋めだった。
生きたまま、機械と一緒に埋められて死ぬまで出してもらえない。死んだとしても、すぐ生き返る。
そして、死んだちょうどその瞬間に両親が機械を確認していないと気づかれないからこれまた出してもらえない。
砂、コンクリート、土。
色んなものを試されて、一番ラクだったのはコンクリートだったっけ。
走りながら考えて、ようやっと目の前に病院が見えてきた。
汗も欠かない、痛みも感じないこの体はなんだと言うんだろうね。
過労死するときはいつだって、この超回復を止めている。なんだか死にたくなるときはそうしている。
死が、目の前に迫る感覚は恐ろしくてどこか、心地よく感じ始めたのはいつだろう。
あの子に、それを感じてほしくない。
生きていてほしい。
私は自分勝手だ。
見捨てるものは全部見捨てて、たった一人だけを理不尽に助けようとしている。
それでいいと思う。
全部助けるなんて無理だから。
助けを伸ばしてくれる手はなかったから。
でも、お茶子ちゃんを見ているとそんな自分が嫌になってくる。
「…Aちゃん！」
思考を、止めて。
目の前にいる人のところに、私の名を呼んでいる人のところに駆けた。
私は、何かに気づき始めている。
見なかったことにしよう。
気づかなかったことにしよう。
そうやって、誤魔化し続けてきたことに。
私はまた、それを次こそ気づかぬように蓋をした。
「遅れました！陽太は！」
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ミナミ(プロフ) - 佐々さん» ありがとうございます！相澤先生かっこいいですよね、私も推しなのですごく分かります！褒めていただけて嬉しいです！これからもよろしくおねがいします！ (2021年6月24日 18時) (
レス) id: f5a254d1c8 (このIDを非表示/違反報告)
佐々 - 相澤先生推しなのでとても嬉しいです！夢主の気持ちの揺らぎ方がとってもうまく書かれていてすごいです！これからも頑張って下さい！！ (2021年6月21日 19時) (レス) id: 664e728fec (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - サキさん» どうもありがとうございます！不定期ですが、何卒宜しくお願いします！ (2021年6月7日 17時) (レス) id: f5a254d1c8 (このIDを非表示/違反報告)
サキ - 文章力があり、とても羨ましいです！！更新応援してます！ (2021年6月6日 13時) (レス) id: 9e2ae1981f (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - ありがとうございます！更新遅くなりましたがこれからもどうかよろしくおねがいします！ (2021年5月30日 21時) (レス) id: f5a254d1c8 (このIDを非表示/違反報告)
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