百十五話。 ページ16
Aside
「寝とけ。」
目が覚めて起き上がろうとしたけれどその声が聞こえてきてそのまま横になっていた。
周囲からは薬品とかの匂いがして、どうやら保健室らしいことくらいしか分からなかった。後は相澤先生が横にいるくらい。
声は怒っているようだったけれど迷惑をかけたかな。
「…どれくらい時間経ちました？」
「三時間だ。
婆さんは栄養失調だと。その点滴が終わるまでは帰すな、って言われた。
その個性でどうやったら栄養失調になれるんだ。」
ううん、やっぱり怒っているこの人。
だからと言ってこう言うときの対処法など私のような人間が知るわけがない。
取り敢えず素直に頷いておくしかないが。
「…分かりません。」
そりゃ、食べなきゃ栄養失調くらいなる。ただ、この個性は超回復と名がつく通り清々しいまでにきれいに回復する。
それまでの不調を一切なかったかのように。
だから、まぁ、ごまかせてしまうしそれにいつも定期的に死んでいた。最近は死んでいなかった。死ぬと自分の最良の状態に戻る。
超回復では栄養不足などごまかすだけで終わるが、死ぬと栄養不足すら補える。
だから、いつもは何もしなくてよかった。
たまに死ぬからそれを気にする必要もなかった。定期的に死なないとやっぱりこうなってしまうなぁ。
「…麗日たちから聞いた。昼飯、学食も食わずにおにぎり二つだけだってな。
他の食事もそれくらいか、最悪とってないんだろう。
それだけで足りるわけがないだろ。
お前は仮にもここの生徒でヒーロー科だ。」
「…お金がないんですよ。
本当は、ここの学費だって惜しいところです。」
普通にここを通おうとなんてしないな。もしも、親が死んであの子と二人きり、なんて生活になっていたら学校に行くなど容易く捨てた。
今でさえ捨てていることだ。
今でさえ、夜も働きに出ている。それは大体、死柄木の相手だったり知らないおっさんだったりまちまちだけれど、お金は私にとって何よりも必要なものだった。
力もいるけれど、お金がなければ結局は救えやしないのだから。
「…まだ入学してそんなに時間も経ってない。このままの生活してたら倒れるじゃあすまなくなるぞ。」
そんなことを言われても、と思った。こうするしかない。最短でどれだけのお金を稼げるか、なのだから。
あの子を救うにはそれしかないのだ。
ヒーローなど宛にならない。
それを身をもって体験したから、私は誰も信用しない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 529人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミナミ(プロフ) - 佐々さん» ありがとうございます！相澤先生かっこいいですよね、私も推しなのですごく分かります！褒めていただけて嬉しいです！これからもよろしくおねがいします！ (2021年6月24日 18時) (
レス) id: f5a254d1c8 (このIDを非表示/違反報告)
佐々 - 相澤先生推しなのでとても嬉しいです！夢主の気持ちの揺らぎ方がとってもうまく書かれていてすごいです！これからも頑張って下さい！！ (2021年6月21日 19時) (レス) id: 664e728fec (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - サキさん» どうもありがとうございます！不定期ですが、何卒宜しくお願いします！ (2021年6月7日 17時) (レス) id: f5a254d1c8 (このIDを非表示/違反報告)
サキ - 文章力があり、とても羨ましいです！！更新応援してます！ (2021年6月6日 13時) (レス) id: 9e2ae1981f (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - ありがとうございます！更新遅くなりましたがこれからもどうかよろしくおねがいします！ (2021年5月30日 21時) (レス) id: f5a254d1c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
