七十三話 ページ25
Aside
雨が降ってきた。
バイト帰りで、今日は丁度給料日だったからそれを受け取ってから家に帰るところだった。
急に冷え込んでいたから、体が冷える前に家に戻らないと。
せっかくメンテナンスしたのに、個性の影響でまた体に影響する。
傘は持っていなかった。
それでも、家の近くだったから走って帰った。
家について、ドアを開けようとした。
早く入って暖まりたかった。
電気はついていて、まだ起きているようだった。
鍵が、かかっていた。
はじめての事だった。何時も、絶対に鍵だけは空いていたから。
チャイムを鳴らした。
誰も、出てこなかった。
耐えきれなくなった。また、走り出した。雨に体が濡れる。
凍えそうだ。
こんな個性いらない。いらなかった。必要なかった。無個性でありたかった。
こんな個性、持つくらいならば無個性で。
母さん。
お願い。あたしを見て。
それだけでいいから。それ以上は、なにも望まないから。それだけでいいから。
母さん。
あの日の言葉は嘘じゃあ無いよね？母さんはあたしの事をどう思ってるの？
雨は酷くなる一方で、止む気配は無い。どれだけ走ったか、分からなくなっていた。ここが何処かは分かってたけれど、家に戻る気も無かった。
体が動かなくなってきた。
体にもう影響が出て来はじめていた。温度に対する耐性はつけたけれど、まだそこまでつけられていなかった。
この個性の唯一の欠点だ。
そのまま、体は地面に向かって倒れていった。眠くなった。
寒いと眠くなるって、案外ほんとなのかな。
あたしはこれからどうやっていけばいいのかな。兄さんはあたしのことどう思っているのかな。
兄さんはあたしを許してくれるかな。
死ぬことに恐怖は感じないけれど、生きたいとも思ってはいないけれど。
もう一度でいいから、母さんと会話をしたかった。普通の、極普通の親子の会話をしたかった。
服を買いにいったり、一緒にテレビを見たり。ヒーローを見てすごいって言い合って、色んな事に一喜一憂して。
そんなことが出きる、極普通の親子に。
そう思ったのを最後に、あたしは意識を手離した。
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すぐる - 50話の「応用が利く」のところが「応用が聞く」になっています。細かくてすいません🥳 (2023年1月12日 0時) (
レス) @page2 id: a8ac25d13a (このIDを非表示/違反報告)
羽鶴,,, - この作品のおかげでサーを推しはじめた (2022年12月27日 1時) (レス) @page4 id: e85af83036 (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - 轟の成長みたいな感じですか？ 母が言っていたセリフも似ていますよね！ (2022年7月28日 20時) (レス) @page20 id: 279e5ec09b (このIDを非表示/違反報告)
たむたむ - ミリオの個性は通過じゃなくて透過だよ (2021年10月11日 22時) (レス) @page2 id: 124affbb66 (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - 脱線脱出tomorrow さん» ありがとうございます！これからもよろしくお願いいたします (2019年12月11日 4時) (レス) id: 4b9f084e7b (このIDを非表示/違反報告)
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