二百七十六話。 ページ27
Aside
お茶子ちゃんの様子が変だったけれど何でもないというし、先生にあいさつしてすぐにここから立ち去るつもりだったのでそのままその場を後にした。
皆はまた後で、と言って。
また後でなんてどこにも存在しないのにな。
そう思いながら雄英の校門に向かって歩く。かなり離れていたしこれ結構だるい。何なら一瞬で飛んでしまいたいがそれは後始末が厄介だしなもう少し、普通でいないと。
すると後ろから誰かが追いかけてくる足音が聞こえてきて足を止めて振り返った。
「ヤンキーくんじゃない。
どうしたの、さっきとっても活躍してたでしょう。なんだか変わったね。」
いつもと違う雰囲気に異変を感じる。
この呼び名も彼はだいぶ嫌っているはずなんだけどな。彼はそれにすら反応を見せなかった。見たこともないような表情でこちらを静かに見つめてくるだけだった。
「どうしたの？君らしくもない。」
「…ずっと。」
彼には不釣り合いな声が聞こえてきた。
今まで聞いてきた彼喉の声よりも優しい響きを持っていた。
ああ、大丈夫かと聞いてきたときもこんなだっただろうか。
「ずっと、俺には助けたいやつがいる。」
なんだか、話の流れがつかめなかった。
それが私と何の関りを持っているのか。ここで、雄英高校で私たちは出会ったのだ。初対面だからきちんと個性をコピーした覚えがある。
まだ、彼の個性は使ったことがないけれど。そもそもコピーした個性は使う当てというものがないのだ。どこにもこの個性を話していないから。
「ずっと。世間の誰もお前を救わないなら、俺が行って、助けるって決めた。俺が全部壊して俺が来たってオールマイトみたいに言うために。」
「…それが何で私につながるの？」
「お前は宮端Aだ。
エンジェルとスピリットの娘で何年も、虐待を受けた。弟の命を救うために連合にいる。違うか？」
とっさに頭が理解できなかった。
こんな風に暴かれるだなんて思ってもみなかったのだ。うまく隠したし誰にもばれていない自信があった。けれど、すでに彼の目はごまかしようがなかった。
「お前が内通者だ。」
それは確かにあっていて、私はあまりの出来事に否定し損ねたのだ。
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