二百四話。 ページ5
Aside
カマをかけられているのか、怪しまれているだけなのか。決定的な発言は避けなければならない。嘘も演技も得意だが、この校長だ。
個性・ハイスペックの効果は私もよく知っているものだ。
だから、余計に気を使う。何せここであまりにも大きい嘘はつけない。
事実を嘘と混ぜて、それっぽく事実にするしかない。
「…ないって言ったら嘘になりますね。」
少しだけ動揺しているように、それでいて少し怯えているように。
スピリットの個性で自分の思考をそれと近いものに操作した。奥底では冷静さを残したまま。
顔はそれっぽくなるからいいだろう。
仕草を怯えた人間のそれにする。
「…どういうことだ？」
乾いたような笑みを浮かべる。
観念したようなものに見せて、どことなく安心しているようにも感じられるように。この表情は次のセリフをそれっぽく見せるのに役立つのだ。
言ってもいいのかの迷いを載せて、声を震わせ、そして次の言葉をやっと発する。
「オール、フォーわん、って言うんですね。
あのおとこ。
けっこう最近、あいました。
入試の一週間前でした。」
この言葉の意味を私は正しく理解していると思う。入試の一週間前、この私…山岸Aと言う少女にとっては親の命日になる。
愕然とした表情に騙せていることを悟る。校長のハイスペックも問題ないようだ。
私の嘘はよくできている。何せ、手本はあの親どもだったのだから。
「…私のお母さんとお父さんを殺したのは、あの映像の通りの、男だった。
うん、そうだと思います。
記憶のとおり、間違いません。」
怯えを強くし、そして、それを強がるように笑ってみせる。手は勝手に震えだす。
その瞬間を確かに私は知っているから。
それは嘘ではないから。
親は本当にあの男が殺したから。あの日の恐怖を、一つ残らず覚えているから。
これは、演技ではないな、と思った。そのまんまの、私の感情になっている。
あの日、私は親を見殺しにした。
「…あの日、私は両親に対して個性を使わなかった。見殺しにしたも同然です。
どうしても、あいつを目の前にすると、動けなかった。
私は、生きていたかったから。」
あの子のために生きていたかった。
あの子がいなければあの場で死ぬのも一興だっただろうなと思う。
「…私は、弟を残してあんなふうに死ねなかった。」
そしてそれ以上にあの男に可能性を感じた。
この男なら、弟を救うだけの金を与えてくれるかもと。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 457人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
猫(プロフ) - 凄く面白いです！！更新されるたびワクワクしていました(*´ ꒳ `*) (2022年1月23日 0時) (
レス) @page14 id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
hgf、jhさいこうでs - 最高です‼️何回も読み直しています！続きが楽しみです。。。ああ、早く夢主ちゃんを救って欲しい。。。 (2022年1月21日 20時) (レス) @page13 id: 9afd2abc65 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
