優しさを知らない少女。 (ページ7)

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六話。ページ7

Aside

　

私の最初の記憶は母親の癇癪のような声だった。

なんて言っていたかなんて覚えてはいない。ただ、気に食わないことがあったんだろう。父と母が愛していたかなんて知らないけれど、でも私は確実にその対象ではない。

それだけはやけに痛感したのを覚えている。

それからの記憶はいつだってどうやってオールマイトを越えるようなヒーローに育成するかという話し合いだった。別にそんなことをしてもきっとあの二人の重いとか因縁とかそんなものは決して晴れることはなかっただろうけれど当時の私は生きることに必死だった。

私はどうしても生きたかった。

子供ながらに何者にもなれずに死んでいくのが怖かったんだと思う。自分に対する記憶とか、そういうものをきっとあの親は碌に残していやしなかったから。

私はどうしてもあのままに終わりたくなかった。

　
「次は何を覚えさせようか。この個性にはまだ可能性がある。」

　
「…そうね、暗殺術も仕込みましょう。」

　
そんなことしか聞こえてこなかった。
もしかしたら、子供ながらにまだ愛されたいなんてことを思っていたのかもしれない。親に真っ当な愛情を向けられたいって思っていたのかもしれない。

親の言うことを律儀に聞いていたのはそういうこともあったのかもしれない。

私にはどうだったかわからないけれど。

　
あの二人はよく私を殺した。

その理由は、まあ、気分だったり殺して強い個性をコピーするためだったり。ほとんどはどうやったら人が死ぬかという実験のためだった。
遊び…だったというか、あの二人の好奇心に過ぎなかったと思う。

この個性は死んでしまうときに生きることを望まないと本当に死んでしまう。私はいつだって死んでしまいたくなかったそれが唯一、救いだった。

そんな日々が本当に気の遠くなるほどの時間過ぎていった、ある日のことだった。