三百二十五話。 ページ27
陽太side
その部屋は血にまみれていた。
一面の黒、黒、黒。
数秒して血なんだ、ということに気がついた。
壁という壁に、床という床に。誰のものかなんて考えなくてもわかった。
「…、何だこの部屋は。」
ぽつり、とクラストの声が落ちた。
異常な部屋だということは僕にもよく分かる。武器が、何に使うかも考えたくないようなものばかりがあって、薬品も数えられないくらいに転がっている。
そしてそこには、多くのヒーローの資料があった。
姉ちゃんの個性は死に帰り。
どれだけの数殺されてきたのだろう。
どれだけ苦しんできただろう。
たぶん、僕には一生理解が出来ない。
「…ここから離れよう。」
「はい。」
クラストはたぶん、何もわかってない。
それでも話す気にはなれなかった。話さなくても良かったし。錆れた匂いに、顔を背けてもと来た道を歩いた。
扉を見ると、来たときは見なかったけど、爪で引っ掻いたような跡がたくさん残っていた。
僕は、姉ちゃんがいたからそれなりにまともに生きてきた。
姉ちゃんはそうじゃなかった。
…どれだけの苦痛だっただろうか。
「あの部屋を、しっていたのか？」
「部屋の存在は知ってました。
…でも、あんなふうになっているなんて知らなかった。」
地上に戻って家から出ると、太陽の眩しさに目を細めた。
ヒーローはとても職業的だと姉ちゃんは言った。そうなんだろう、とあの日は思っていた。その言葉の意味をよくわかってはいなかったし、そこまで深くも考えていなかった。
ヒーローは、職業的だ。
誰かを助けるために大勢を助けるために動く。
そしてそこに個人は反映されない。社会からはみ出された人は相手にされない。
僕たちはそうだった。
両親はヒーローだった。
だけど、敵でもあった。
そんな僕たちには逃げるすべがなかったのだ。
「…！？何故ここに脳無がいる！！陽太くん！！逃げろ！」
ふと、声のした方を見るとそこには化け物みたいなやつがいた。顔が変だな。
筋肉まみれに、むき出しの脳。
生きていないということはすぐにわかった。
数秒後、泥のようなものが襲ってきた。
僕は逃げなかった。
逃げろという声がしたけれど、それよりもなにか、何かを感じた。
姉ちゃんのいるところに、行ける気がした。
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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (11月10日 19時) (
レス) id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - 紅さん» 読んでいただきありがとうございます！これからも宜しくお願いします！ (8月1日 18時) (レス) id: 6614ae932f (このIDを非表示/違反報告)
紅(プロフ) - 表現が全部現実的でリアルで感情移入してしまうほどに全部リアルで１つの感情に色んな思いが込められているのが伝わるような物語で夢中になって読んでいました！これからの展開がとても楽しみですこれからも応援してます！！ (7月31日 20時) (レス) @page34 id: cae32cbb5a (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - 読んでいただきありがとうございます！優しさを知らない少女全編復活しました…！長らくお待たせいたしましたこれからも宜しくお願いします！ (7月15日 21時) (レス) id: 6614ae932f (このIDを非表示/違反報告)
lokiloki - 更新ありがとうございます!! (7月8日 22時) (レス) @page17 id: 74c5318e0a (このIDを非表示/違反報告)
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