三百二話。 ページ3
陽太side
「…ねえちゃん？」
飛び降りて行ったように見えて、手を伸ばして駆け寄った。
なのに、どこにもいない。
どこにもその姿がなかった。地面にもどこにも。だから、いやだと思って姿を消したのだと思った。
そうであってほしいと思ったのかもしれない。
周りの大人は死柄木の個性だとかそんなことをいっていて、あんまりにも理解ができなかった。
ただ呆然と目の前を見つめてた。
「…陽太くん、であっているか？」
警察を呼んだらしく、パトカーのサイレンが聞こえてきた。その時に、姉と最後に言葉を交わしてたヒーローが声をかけてきた。
今更になって、姉の言葉を反芻する。
ヒーローはとても職業的だといった、あの日の姿を。
あの日の声色を。
どこにもいないあの姿を。
「そう、ですけど。」
もはや、何もかもがどうでも良かった。
死にたかったと、何度も繰り返してた。やっぱり死んでしまったのか、死にたいと思わせてしまっていたのか、今すぐ追いかけたい衝動に、追いかけられない現実に、とらわれる。
僕は、なにも…何も知らない。
「…お姉さんを、守れなかった。
すまない。」
その人は静かに頭を下げた。
その瞬間に、ああ、誠実な人だと思った。この人といくらかは親しそうに見えたけれど、心は開かなかったのか。
苦しそうに顔を歪めるこの人は、姉のなんなのか。
僕は、何もかもを知らなさ過ぎた。なにも、本当に何も知らなくて、記憶していなくて、忘れてしまっている。
「あなた、は、姉さんのなんなんですか。」
顔を上げたその人は苦しそうで、でも、姉さんはこの人よりは確実に苦しんでいた。
ならば、この目の前の男の人は何なのか。
「…担任の、教師だ。」
雄英の教師はみんな、ヒーローだと聞く。では、この男の人もヒーローなんだろう。
僕の両親はテレビに取り上げられるような有名なヒーローで、姉さんは…何もされていたんだろう。
姉さんは何も教えずに死んでしまった。
残ったのは、僕に生きてほしいという姉の願いだけだった。
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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (11月10日 19時) (
レス) id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - 紅さん» 読んでいただきありがとうございます！これからも宜しくお願いします！ (8月1日 18時) (レス) id: 6614ae932f (このIDを非表示/違反報告)
紅(プロフ) - 表現が全部現実的でリアルで感情移入してしまうほどに全部リアルで１つの感情に色んな思いが込められているのが伝わるような物語で夢中になって読んでいました！これからの展開がとても楽しみですこれからも応援してます！！ (7月31日 20時) (レス) @page34 id: cae32cbb5a (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - 読んでいただきありがとうございます！優しさを知らない少女全編復活しました…！長らくお待たせいたしましたこれからも宜しくお願いします！ (7月15日 21時) (レス) id: 6614ae932f (このIDを非表示/違反報告)
lokiloki - 更新ありがとうございます!! (7月8日 22時) (レス) @page17 id: 74c5318e0a (このIDを非表示/違反報告)
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