三百十七話。 ページ19
陽太side
壊理ちゃんに遊ぼう、と誘われたけれどその日は爆豪さんに止められたテレビの再放送があったので勉強する、と言って部屋に籠もった。
テレビに流れているエンジェルとスピリット。
人々から慕われたヒーロー。
その笑顔に安堵する声。心からそのヒーローを待ち望む声。
あの人たちが自分の家族だったというのになんとなく納得は出来なかった。自分にも親はいるだろうと言うことは知っている。だけれど、でも。
たった一人だけ、姉だけだった。
姉だけ。
ずっと笑ってそばにいてくれた人。
僕のためにお金を稼いでくれて、治療をしようと懸命に努力をしてくれた人。
世間は、広くて。
本当なら親がその役割を担うはずだったこと、両親が少しでも早く僕を病院に連れて行っていればここまでの悪化も移植手術も必要なかったこと。
本当なら僕らは保護対象だったこと。
そんな話を聞いて、僕たちの当たり前は随分も違ったらしいことに気づいた。当たり前だった。姉ちゃんに守ってもらうことはもうずっと。
『助けて。』
テレビで、姉の声がした。
幼い姿、幼い声。
そして、助けを求めてる。
『エンジェルとスピリットには二人の姉弟がいました。敵はその二人の命をも奪ったのです。
姉の方には精神疾患がありましたが、エンジェルとスピリットは二人を心から…。』
テレビに映った姉の姿。
助けを乞う姿。
その後ろで姉の服を引っ張り、背に隠れる自分がいる。たくさんのフラッシュに目をつむり、そしてそのカメラマンたちを睨む。
「…ああ、ああ！！」
おもい、だした。
喋るのが遅かった。
姉のそばに隠れて、暴力から身を守った。子供だった。どうしても、どうしても力がなくて。
僕は姉ちゃんを親のように思ってた。
庇護者は姉ちゃんだった。
でも、姉ちゃんはとうに諦めてた。ぼくは、諦められなかった。多分それがいけなかった。
『たす、けて。』
テレビに良く映っていたのは、ヒーローの戦う姿。それに伴って助けを求める人々。
僕が覚えてしまった言葉は、それだった。
『たすけて、ねえちゃん、』
だから、姉ちゃんは。
僕を守ってくれていたのだ。
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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (11月10日 19時) (
レス) id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - 紅さん» 読んでいただきありがとうございます！これからも宜しくお願いします！ (8月1日 18時) (レス) id: 6614ae932f (このIDを非表示/違反報告)
紅(プロフ) - 表現が全部現実的でリアルで感情移入してしまうほどに全部リアルで１つの感情に色んな思いが込められているのが伝わるような物語で夢中になって読んでいました！これからの展開がとても楽しみですこれからも応援してます！！ (7月31日 20時) (レス) @page34 id: cae32cbb5a (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - 読んでいただきありがとうございます！優しさを知らない少女全編復活しました…！長らくお待たせいたしましたこれからも宜しくお願いします！ (7月15日 21時) (レス) id: 6614ae932f (このIDを非表示/違反報告)
lokiloki - 更新ありがとうございます!! (7月8日 22時) (レス) @page17 id: 74c5318e0a (このIDを非表示/違反報告)
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