二十八話。 ページ28
Aside
「氷河さん。」
「冨岡か。どうした。」
二日ほど町を歩き、なるべく彼らとは関わらないような生活をした。
仲間にもなりはしないし、船がアTれ場すぐにでも出ていく。問題は船がないことだけだった。
仕方ないことなのかもしれない。
この町にある造船所は壊されてしまったらしい。
鬼によって。
かといって竈門炭治郎の兄弟とともにあの船に乗るのも気が引ける。
冨岡達は同じ船で移動している。私たちでいうあの頃と同じように。私はその船に乗ったが最後、きっとあの妹を殺すだろうから。
「…あの海賊は良い海賊だと仲間からも聞きますが。
やはり仲間にはならないんですか。」
「そのくらいわかっているよ。」
わかっている。
自分の親とも違う。そして弟とも違うのだろう、彼らは。そうやって生きられたらきっと、私ももう少し楽になれるのだろう。
「私だって海賊が皆嫌いではないし。冨岡もそうだろう。鬼のような海賊もいれば、人間のように行きたがる海賊もいる。」
海賊を鬼と同義に見て嫌うものも鬼殺隊にはいるがほとんどは海賊も悪いものばかりではないと思っている。
「…ただ、そうだな。
私が、耐えられないだけだ。」
家族になることも、失うことも、もうずっと目を背けてきた。
謝罪も許しが欲しかったわけではない。
それはきっとあの家族もそうだった。ただ謝っているという事実が欲しかった。忘れないで生きているという、後悔をして少しでも償っているような気にさえなれればよかったのかもしれない。
謝罪なんかで償えるものではない。
だから鬼を殺して殺して、そうすることで生きてゆるされた気になっていただけなのかもしれない。
だからきっと彼らはもう来るなと言ったのだ。
許したようで、赦していなかった。当然のことだが。
彼らを失ったとして、私はどうすればいいのだろう。その先、生きられるだろうか。謝罪などでは事足りぬこの世界でどうやって生きていけばいいのだろうか。
終わり←二十六話。
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シンヤ(プロフ) - 続きとても楽しみにしています (2022年11月9日 10時) (レス) @page28 id: 42d6be6a70 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 面白いです!続き楽しみに待ってます! (2020年11月28日 23時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - 続き楽しみです! (2020年11月12日 8時) (レス) id: 5b21830898 (このIDを非表示/違反報告)
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