二十六話。 ページ27
Aside
息がつまるようだった。
言葉がでなかった。
忘れていいと、言ってくれる人はいなかった。起きてしまったことを罪として受け止めるしかなかった。
私の過去を、全てを、なかったことにして本当に最初から家族であったとしてくれると。
それを、どんなに望んでいたのか言われてから実感した。
油断すると、泣き出しそうだった。
泣き叫びたくなったくらいだ。
あの子が死んでから私は鬼を殺して生きてきた。それだけを糧として。
忘れてはいけないと言うのはわかってる。
そう言われたとしても忘れると言うことは無理に近いことだろう。
そして、私は前に進むわけにはいかない。
実を言うと、この間謝罪に行ったとき許されたんだ。あの子が殺してしまった子供たちの両親は私を許した。
憎いだろうに。
『…あなたの事情も、聞いています。
そして、その手で責任を果たしたと言うことも。
もう、構いませんから……あの子達は確かにあなた方のせいで死にました。
それでも…私は、私たちはあなたを許します。
もう二度と、ここに来ないでください。』
それは、はじめて聞いた拒絶以外の言葉だった。二人は泣いていた。
八年と言う月日で祖父だった方は亡くなったらしい。
それほどに長い時間がたっていた。
維持を張っていると、言われるだろうが私は家族にならない。
前に進みたくない。
幸せになったその先で失うこともあるだろう。もしも、この人たちが鬼になったら私はまた切るのか?
私は無力だ。
何もできない。
私はもう疲れたんだ。
鬼を切るくらいしかできないし、もう……大切な人間を鬼として切りたくない。
「…ならない。
ごめんなさい。」
そう言って私は船を降りた。
それ以外に言う言葉は思い付かなかった。後ろから隠の璃亜が追ってきた。
それを見て、他の人も。
私には何もできない。
特別な強さも持たないし、痣もこの呼吸のせいかもしれないが発現する気配すらない。
まぁ、仕方ないか。
ほとんど透明に変わった色変わりの刀は血に染まっていて昔から変わらなかった。
人もこんな風であればいいのにと、心底思った。
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シンヤ(プロフ) - 続きとても楽しみにしています (2022年11月9日 10時) (レス) @page28 id: 42d6be6a70 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 面白いです!続き楽しみに待ってます! (2020年11月28日 23時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - 続き楽しみです! (2020年11月12日 8時) (レス) id: 5b21830898 (このIDを非表示/違反報告)
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