２２ ページ30
連絡先の交換はどうしても避けたかった。
だから払ってもらった分を返すと言っても全く聞いてもらえない。
『返す』
藤「いらんって(笑)」
このやり取りを続けること30分。
さすがに疲れてきた。
…連絡先を交換してすぐブロックすればいいか。
そうだ、そうしよう。
『…わかった、教えるから携帯出して』
藤「うわー長かった〜(笑)‥はい」
差し出された携帯に自分の番号を打ち込む。
『はい、登録したから。じゃあ、わたし帰るね』
藤「うん、じゃあね」
大将にお礼を言って店を出た。
店の前でタクシーを捕まえようとするも
こんな日に限って中々捕まらなかった。
藤「なに、まだおったん(笑)」
店から出てきたであろう藤浪くんがまた喋りかけてきた。
『タクシーが捕まらないの！もういいから構わないで帰っててよ…』
藤「冷たいなー、さっきまで相談乗ってやったっていうのに、、、」
『あれは口が勝手に動いたと言いますか、、もう忘れてくれていいから！』
藤「それは無理やな。…Aはほっとけへんてゆーか、俺が一目惚れした相手やからな」
『…は！？』
藤「選抜の時、客席に、目に涙溜めながら一生懸命応援してる子がおってん。試合終わってからもその子の姿が頭から離れへんくて、花巻東ってことしか分からんかったからとりあえず、一か八か、そっち側の客席に行ってみたんやん。そしたらつまずいてカバンの中身ばら撒いてる子がおってさ、よーみたら俺が探してた子で…(笑)チャンスや！思って、学生証拾って名前だけでも覚えようって中身覗いてん」
『……』
藤「そしたら大谷とのツーショット出てきて、、あーなんや大谷の女かって思って諦めた。…いつかまた会えへんかなって思ってたらなんや歌手になってて。えらい有名人になってもうたけど、おかげでまた会えた(笑)」
『……』
藤「やからあんな寂しい顔されたら俺にもチャンスあるんかなって思ってまうやろ(苦笑)」
まあないのは分かってるから。あんま気にすんな。
藤浪くんは、そう言っていつの間にか止めていたタクシーにわたしを押し込んだ。
『え、、、ちょっ、、、、』
藤「運転手さん、お願いしますね！」
タクシーのドアが閉まり、
急いで窓を開けた。
『ありがとう』
藤「おう！、、、頑張れよ、Aちゃん」
優しい笑顔でそう返してくれた。
不覚にもわたしは、その笑顔にドキッとしてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1631人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まち(プロフ) - 切なすぎます。更新楽しみにしてます (2023年4月8日 23時) (
レス) @page50 id: 6ba1d4a17e (このIDを非表示/違反報告)
るる - こちらのお話が大好きです！次の展開も楽しみにしてます！！ (2023年4月8日 10時) (レス) id: c1f7251b5b (このIDを非表示/違反報告)
chika0811ab(プロフ) - 泣きました。素敵なお話し本当にありがとうございます。続編気長に待ち続けます。 (2023年4月7日 23時) (レス) @page45 id: 43f90433e5 (このIDを非表示/違反報告)
若葉(プロフ) - 高校卒業のときに渡した花束より本数も増えて込められた気持ちも強くなってより泣けました😢 世間の目や彼を思った夢主の行動がかっこよすぎる…✨続編も楽しみにしてます！ (2023年4月7日 22時) (レス) id: 0d70f41477 (このIDを非表示/違反報告)
ぴんく(プロフ) - 番外編も最高すぎです😭続編気長に楽しみにしてます！ (2023年4月7日 21時) (レス) @page50 id: a93e51db73 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：菜々
| 作成日時：2023年3月28日 17時
