８ ページ16
翔平の衝撃的な初打席は、日本のみならずアメリカでも大きく報じられた。
とあるアメリカのスポーツ新聞の一面では、
翔平のヒットにガッツポーズしながら大喜びする女性の姿が載せられていた。
見出しは“トラウトファンまでイチコロにするショウヘイ・オオタニ”。
…間違いなくわたしだった。
幸い顔は帽子で隠れていてほとんど見えていないから誰もLylaってことに気付かない。
記事を見た翔平から電話がかかってきて大笑いされたし、
サミーにはこっぴどく注意された。
穴があったら入りたいとはこういう時に使う言葉なんだろうな。
開幕戦から3日後の4月1日
アスレチックス戦で先発投手として初登板することになっている。
完璧だと思っていた変装は、新聞に取り上げられたからもうできない。
あの姿で来ると逆に注目を集めかねないからだ。
迷った挙句、サングラスを掛けて観戦することにした。
案外普通にそこにいるほうが目立たない。
昔好きだった女優さんの言葉を信じて挑むことにした。
背中に“OHTANI”と書かれた真っ赤なユニフォームに袖を通し、座席に着いた。
トラウトのユニフォームは家でお留守番。
というのも開幕戦後、
翔「ていうかなんでトラウトなの、ありえないんだけど」
『えっ…(苦笑)』
翔「‥‥」
『もともと持ってたんだよね〜、、』
翔「好きなの？」
『かっこいいじゃん？(笑)』
翔「うざいんだけど」
『…ごめんー(苦笑)……次は、翔平のユニフォームでいくから！ねっ？』
翔「…信じられない」
てな感じで詰めに詰められていたからだ。
会場を見渡すとちらほら日本人の姿が。
今のところ誰にも気づかれていない。
よしよし。
翔平がマウンドに立ち、試合が始まる。
昔から翔平がピッチャーをするときは、心臓が飛び出そうになるほど緊張する。
ユニフォームの裾を握りしめ、マウンド上の幼なじみの姿を見つめた。
結果、逆転3ランを被弾するも、6回を3安打3失点で初勝利をつかみ取った。
開幕戦に野手で先発出場した選手が開幕から10試合以内に投手で先発するのは、
1919年のベーブ・ルース以来99年ぶりらしく、またまたニュースは翔平一色となった。
インタビューに答える翔平の目は、
いつか夢を話してくれたときのようにキラキラ輝いていた。
翔平がこんなに頑張ってるんだからわたしも負けてられない。
本棚にある懐かしい1冊のノートを取り出し、今日もわたしはあなたに対する想いを歌詞にする。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1631人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まち(プロフ) - 切なすぎます。更新楽しみにしてます (2023年4月8日 23時) (
レス) @page50 id: 6ba1d4a17e (このIDを非表示/違反報告)
るる - こちらのお話が大好きです！次の展開も楽しみにしてます！！ (2023年4月8日 10時) (レス) id: c1f7251b5b (このIDを非表示/違反報告)
chika0811ab(プロフ) - 泣きました。素敵なお話し本当にありがとうございます。続編気長に待ち続けます。 (2023年4月7日 23時) (レス) @page45 id: 43f90433e5 (このIDを非表示/違反報告)
若葉(プロフ) - 高校卒業のときに渡した花束より本数も増えて込められた気持ちも強くなってより泣けました😢 世間の目や彼を思った夢主の行動がかっこよすぎる…✨続編も楽しみにしてます！ (2023年4月7日 22時) (レス) id: 0d70f41477 (このIDを非表示/違反報告)
ぴんく(プロフ) - 番外編も最高すぎです😭続編気長に楽しみにしてます！ (2023年4月7日 21時) (レス) @page50 id: a93e51db73 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：菜々
| 作成日時：2023年3月28日 17時
