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カルテ08 ページ9

「どうして言ってくれなかったんですか?」

Aに言われたように、昨日の出来事を院長に話してみた。

そうしたら、怒られた。

どうして、言ってくれなかったんだと。

「もし、私が怪我人を放置して、院長に連絡していたら、怪我人は死んでいたかもしれません。」

「…そうですね。緋純先生、あなたの言うことは正しいです。」

でも、怒られるには充分すぎる理由だと思った。

担当する手術に遅れる。

たとえ俺がアシスタントだとしても、よくないことだった。

「今回は、私のミスです。申し訳ありませんでした。次回からは気をつけます。」

頭を下げる。

院長は静かに俺を見つめ、口を開いた。

「そういう事情があるならその手術の担当医にも説明しないといけませんね。僕から言っておきましょう。」

どこまでいい人なんだ。

「…ありがとうございます、助かります。」

そう言って院長室を出ようとしたとき。

「あぁ、もう少し待っていただけますか。」

…?

なんだろう。

「先日は突然電話してすみませんでした。その件なんですが。」

院長に向けていた背中を裏側にする。

「何か、進展が…?」

「えぇ。数日中にもこちらに届きます。羽ヶ咲さんに使ってもらってください。その際は立ち会いますので。」

…!!

「それは、よかったです。彼女の治療が始められると思うと。」

院長は笑顔でうなずく。

「彼女には、使用中は入院してもらわなければいけませんね、その辺りはお願いできますか?」

「わかりました。」

院長は続ける。

「それと、もう一つ頼みたいことがあって。」

もう一つ?

「入院中の羽ヶ咲さんについてですが、試験中の治療用品を使っていただくので、本人にはストレスや不安があるでしょう。それで、羽ヶ咲さんのカウンセリングも忘れずにお願いします。」

分かっている。

そのために外科の他に精神科の資格も取ったんだ。

「次の彼女の診療はいつですか?」

あ、えっと。

「明後日です。」

「わかりました。それでは、その時は保護者と一緒に来るように伝えてもらえますか?入院についてお話してください。」

院長は俺とAがお互いの連絡先を知ってるのも知ってるんだな。

やっぱりすごい、この人は。

さて…やることが多いな。

院長室を出て、改めて気を入れ直した。

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作品ジャンル:ミステリー, オリジナル作品
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円香(プロフ) - くまの助さん» 読んでいただきありがとうございます! ジャンル、そうですね…アドバイスありがとうございます。 (2018年8月21日 7時) (レス) id: d1740a14bb (このIDを非表示/違反報告)
くまの助(プロフ) - 気がつけば読み終えていました。ジャンルがファンタジーよりミステリーかな?という印象です (2018年8月20日 21時) (レス) id: 20308b11a1 (このIDを非表示/違反報告)
円香(プロフ) - 吐露@菊秦芳は露を吐くさん» ありがとうございます!病院シリーズは初めてなのでよくわからなかったのですが…そう言ってもらえて少し安心しました(笑) (2018年6月9日 20時) (レス) id: d1740a14bb (このIDを非表示/違反報告)
吐露@菊秦芳は露を吐く(プロフ) - なんだかお話の設定やら病院の雰囲気やらがしっかりしていて読みやすかったです!続きを楽しみにしていますね! (2018年6月9日 20時) (レス) id: 07eaa6a5bc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:円香 | 作成日時:2018年4月23日 17時

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