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カルテ15 ページ16

時間になったから戻ってきた。

幻覚、無意識はなかった。

「おかえり。」

緋純先生はそこにいた。

今までずっとここにいたのかな?

「どこ行ってみた?」

「えっと…精神科です。」

「え…精神科?」

さっきまで笑顔だった先生は急に顔をしかめ、私が言ったことを繰り返した。

「誰かに会った…?」

…何か、まずかった…?

「……いえ、誰にも。」

……。

な、に…?

「嘘…つかないで。わかるんだ、こっちは。」

え…?

「嘘ついてるのは分かる。本当のことを言って。」

怖い、な…。

今までにない雰囲気だった。

本当のことしか、言えない…。

「ごめんなさい、嘘つきました。年の近い男の人に会いました。」

「名前は、聞いた…?」

焦りを抑えてる感じ…。

何だろう…。

「立花 香月くんです。」

少し話して、お互いに敬語を使うのはやめようということになった。

「…そう、香月くんね…。」

謎…。

「彼は、Aに何もしなかった…?」

え…。

「そんな、とても穏やかで優しかったです。」

先生は苦虫を噛んだような顔をした。

「…彼とは、関わらない方がいいよ。」

なんで…?

「彼、なんで精神科か分かる?」

「いえ…むしろ精神科にはいないタイプだと…。」

「そう、でしょ。」

香月くん…どうかしたの…?

「君の希望でいい。院長からなるべく多くの患者に香月くんのことを伝えるように言われたんだ、どうする?」

何かあるなら、知らなきゃ…?

「…お願いします。」

「彼は、数週間前まで虐待を受けていたんだ。」

虐待…!?

「しかも、暗くて狭い部屋でやる陰湿な方。」

そんな傷はなかった…。

「それでね、おかしくなっちゃったみたい。今まではもっと暗くて無口だったんだって。」

「それで、なんで香月くんが変わっちゃったか調べてるんですか…?」

「…そう。だから君に向けてる笑顔は本物じゃないかも。まぁ、俺は今は精神科じゃないから詳しくはわからないけど。」

そう、なんだ…。

「…ごめんなさい先生。逆らってもいいですか。」

「え?」

「ここで初めてできた友達です。これも含め、しっかり知りたい。」

これが私の結論だ。

「…そう。……そっか。」

先生はしばらく考えている様子で、やがて結論を出したようだった。

「わかった。まだ異常だって分かったわけじゃない。だけどそういう事情だ、気をつけて。」

そして先生はいつもの笑顔に戻ってくれた。

戸惑いはまだ、あるけど…。

とりあえずよかった。

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作品ジャンル:ミステリー, オリジナル作品
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円香(プロフ) - くまの助さん» 読んでいただきありがとうございます! ジャンル、そうですね…アドバイスありがとうございます。 (2018年8月21日 7時) (レス) id: d1740a14bb (このIDを非表示/違反報告)
くまの助(プロフ) - 気がつけば読み終えていました。ジャンルがファンタジーよりミステリーかな?という印象です (2018年8月20日 21時) (レス) id: 20308b11a1 (このIDを非表示/違反報告)
円香(プロフ) - 吐露@菊秦芳は露を吐くさん» ありがとうございます!病院シリーズは初めてなのでよくわからなかったのですが…そう言ってもらえて少し安心しました(笑) (2018年6月9日 20時) (レス) id: d1740a14bb (このIDを非表示/違反報告)
吐露@菊秦芳は露を吐く(プロフ) - なんだかお話の設定やら病院の雰囲気やらがしっかりしていて読みやすかったです!続きを楽しみにしていますね! (2018年6月9日 20時) (レス) id: 07eaa6a5bc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:円香 | 作成日時:2018年4月23日 17時

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