探し猫 -kzh- ページ28
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あれ、Aどこだ?
「すみません、A見ませんでしたか?……そっか、あざす」
後ろから黄色い歓声が聞こえるが、そんなことはどうでもいい。今日は一切見かけなかったあいつを探さなくてはいけない。
「あいつ、すーぐ消えるからな…」
猫みたいで捕まえてもスルッと手から抜け出してしまいそうな奴。
「はぁ〜?まじでどこ行った?」
まさかあいつがサボりとかありえない。体調が悪くても出席するやつだから朝見かけたはずのAが無断でどっか行くわけがない。俺の勘がそういっている。
「…俺はあいつのなんなんだ?別にこんな探さなくたって生きていけるしそもそもほっとけばいい話なのに」
分かってる。自分でもなぜこんなにAを探し求めているのかは。でも自分で認めるのがどうにも気に食わなくて、でも体は矛盾なことにどんどん動いていって。
「…あ。」
居た。
ガラガラガラ…
「おい、A」
ビクッと体をはねらせる後ろ姿が恐る恐る俺の方に向いていく。
『な、なぁーんだ、葛葉くんじゃないですか〜、』
「おまえ、何隠してる」
『べ、別に何も隠してなんか』
窓を飛び越えて草むらに移動し、Aの腕を軽く上げる。
『あ、ちょっ!』
「…は?猫?」
おそらく泥だらけであろう猫がダンボールに入ってみゃーみゃー鳴いていた。
『この子学校の入口の近くに置いてあったの。ボロボロで放っておけなくて』
「………なんだよお前さぁ〜!人が心配して探し回ったってのに!逆に救助活動かよ」
心配して損した。ちゃんと元気で良かった。いじめられてんのかと思ったし。
「てか、そんなんなら生物の先生とかに預けとけばいいじゃん」
『やだよあの先生なんでも実験にしそうじゃん…』
「あー…まぁ、あながち間違いではない」
『これ、秘密だよ?私と葛葉だけの秘密、ね?』
ふぅーん、俺らだけの、ねー…
「つか、お前も泥だらけじゃん。猫か?」
Aの顔についていた泥を手で拭う。
「お〜ら、よしよ〜し、ちゃんと授業には出ましょうね猫ちゃ〜ん」
『私を撫でるなー!』
こいつ、ほんとに猫みたいだ。撫でくりまわすと目細めて嫌がる猫。
いつまでたっても捕まえれない、変な猫。
「捨てられてたら拾って守るからなー」
まるで両方に語りかけたかのように言うとどちらもきょとんとした顔で鳴いていた。
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作者名:白い月 | 作成日時:2023年2月16日 2時