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初めて呼んだ君の名前。
初めて君に話しかけた時、君は苦しそうに泣いていた。
そして今度は、死んでしまいそうなほど辛い顔をしている。
怒る気も、責めるつもりもないけど
それを伝える前に、僕は君にアイツと会わせないといけない。
「硝子、僕だよ。」
解剖室の扉をノックして、部屋の主に声をかける。
返事のない代わりに開いた部屋に入り後ろを振り返ると、
勘の良い君は今にも泣きそうな顔で足を止めた。
『どうして、っ…』
「親友の特権さ。傑って善人ぶって結構根に持つタイプだろ?君に会わせないで埋めたら後で何が起こるか分かんないよ。」
堅く握られた手をとって彼のもとまで連れて行く。
それほど傷を負っていない左側だけ布を取り、
呆れた顔の硝子の所へ下がった。
正直僕を差し置いて彼女に言い寄ったアイツには腹が立つけど、
親に決められた関係に胡座をかいて君を救えなかった僕には、ここで後悔するのがお似合いなのかもしれない。
高専の交流会の時、
僕の許嫁だと知っててやけに馴れ馴れしく話していたあの時、
子どものように拗ねてないで
彼女は僕と結婚するんだと
ちゃんと釘を刺しておけばよかった。
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『…っ、すぐるさん……、すぐるさん………すぐるさん…―』
硬く、冷たくなった傑の手を両手で握りしめ、声を震わせながら、
ただ何度も名前を呼ぶA。
泣き続ける君に寄り添って慰めたとしても、
僕は傑の代わりにはなれないし、
君を泣き止ませることもきっと出来ない。
「………。」
「大失恋だな、五条。」
「…………まあね。」
「散々言っただろう。素直にならないと後で後悔するって。」
「……説教すんなよ硝子。マジでへこんでるから。」
「はいはい。」
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ウミナミ(プロフ) - 展開や丁寧な文法に魅入ってしまいました…!好きです! (2月24日 11時) (レス) id: 20cf3f5f40 (このIDを非表示/違反報告)
ぬ(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2月2日 4時) (レス) id: bfa0e31481 (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - 好きです… (1月17日 16時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
酒井 - 更新楽しみにしてます! (1月14日 17時) (レス) id: a5077b13d9 (このIDを非表示/違反報告)
ほし - 新作もめちゃくちゃ好きです。無理なさらず頑張ってください! (1月13日 22時) (レス) id: 6dcdb3b145 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縞 | 作成日時:2021年1月13日 20時