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「そんなに嫌なら逃げれば良いだろ。」
『…っ、』
「泣けば助けてくれるなんて期待してんのか?残念だったな。そんな奴ここには居ねえよ。」
『……。』
夜になり、誰も居なくなった部屋で啜り泣く声が聞こえた。
声の主はさっきの少女。
助けてのたった一言の声も出さずに、
ただ憐れまれるのを待つだけの姿に無性に虫の居所が悪くなった。
袖で顔を拭い、
初めて見せた顔。
最初で最後に見た、あいつの弱った顔。
「…、」
『ごめん、なさい…』
生まれて初めて、自分の言葉を呪った。
誰かに勝手に結婚相手を決められて、
それがこんなに弱く、愚図な女である事に腹を立てていた。
今までに何度も見た、
親の地位に胡座をかいて
弱くて着飾るしか脳のない女だと思っていた。
六眼に写るのは、
目の前の少女の中に眠る恐ろしい獣達の影。
あの光景の不快感に気を取られ、
起こっていた事の真意を見誤っていた。
「…っ」
耐えきれず、逃げ出した。
吐き出してしまった言葉を取り繕うことも、
謝ることさえも出来ずに。
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少しだけ成長して、高専生になったあいつを見た時。
五条悟の許嫁だからと、
東京校から嫌味を言われても、
京都校の仲間から邪険にされても、
表情ひとつ動かさないあいつを見た時。
もう何も傷付かなくなってしまった姿に、
また自分を責めた。
あの時の言葉を謝らなければいけないのに。
もう泣かなくても済むように、守らなければいけないのに。
何度も傷付ける事しかできない自分が
堪らなく嫌になった。
何も知らずに、
馴れ馴れしく話しかけ、
肩に触れる傑が羨ましかった。
もしあの頃の僕に、
もう少し素直になれる勇気があれば、
ただ君に、愛してると言えていたなら、
今頃きみは、
僕の隣に居てくれたのかな。
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ウミナミ(プロフ) - 展開や丁寧な文法に魅入ってしまいました…!好きです! (2021年2月24日 11時) (レス) id: 20cf3f5f40 (このIDを非表示/違反報告)
ぬ(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2021年2月2日 4時) (レス) id: bfa0e31481 (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - 好きです… (2021年1月17日 16時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
酒井 - 更新楽しみにしてます! (2021年1月14日 17時) (レス) id: a5077b13d9 (このIDを非表示/違反報告)
ほし - 新作もめちゃくちゃ好きです。無理なさらず頑張ってください! (2021年1月13日 22時) (レス) id: 6dcdb3b145 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縞 | 作成日時:2021年1月13日 20時