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「やあ。」


『……。』






自宅マンションのエントランス。
高専からたったの徒歩10分しか離れていないこんな所で、手を振って待ち構えている。

普段の袈裟姿よりは胡散臭さはいくらかマシだが、
纏った雰囲気と大きな体のせいでどうみても堅気ではない。






『昨日の今日で良く来れますね。』


「君こそ。もっと驚いた顔が見られると思ってたんだけど。」







結っていない長い髪を掻き上げながら歩み寄り、
背中を丸めて覆いかぶさるように顔を近づける。

東京と京都。
つい昨日、
呪術界を巻き込んで宣戦布告をしてきたばかりの男とは思えない
優しい手と甘い口付け。

最悪の呪詛師だなんて時々忘れてしまうほど
この人は愛情深い。







「優等生で真面目な君が私と恋仲なんて、お仲間やお父上が知ればきっと卒倒するね。」


『からかってる?』







「いいや?」


『嫌な人。』







「お互い様だよ。親友の許嫁に手を出した私も、受け入れた君も。嫌なやつで、同罪さ。」


『……。』








悟さんと同じように交流会で初めて会い、少し話しただけ。
呪詛師になって私に会いに来たときは驚いた。

自分が誰かと愛し合うなんて想像もつかないまま、
流されて、絆されて、気付けば愛おしくなっていた。

よりによって、貴方を。









「君が悟のものじゃなければ、遠慮なく連れて行けるんだけど。」








部屋に着いて上着を脱ぎ、
当たり前のように寝室へ二人で倒れ込む。

何年経っても、
何度重なっても、
大切そうに、割れ物のように私に触れる傑さん。

暗闇の中で、月明かりに照らされる貴方が好き。

困った様に眉を下げて笑う顔も、
たまに意地悪になる口も。


貴方の腕の中が、この時間が、この世界で一番好き。









『私の代わりなんて、いくらでも居るのに。』


「君は唯一だよ。悟はちゃんとAを愛してるさ。」







『嘘吐き。不徳。陰険。助平。』


「こら。」









もう裏切ってしまった親友を
今でも想い、守ろうとする。

その顔をすれば
私が何も言えなくなるのなんて、全部お見通しなのだろう。









『………。』


「そんな顔をしないで。出会った頃から、私は君に心底惚れている。愛してるよ、A。でも君は、私を愛してはいけない。」









優しい仕草と言葉で、私を突き放す。

仏のように優しくて意地悪な、私の最愛の人。

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ウミナミ(プロフ) - 展開や丁寧な文法に魅入ってしまいました…!好きです! (2021年2月24日 11時) (レス) id: 20cf3f5f40 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2021年2月2日 4時) (レス) id: bfa0e31481 (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - 好きです… (2021年1月17日 16時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
酒井 - 更新楽しみにしてます! (2021年1月14日 17時) (レス) id: a5077b13d9 (このIDを非表示/違反報告)
ほし - 新作もめちゃくちゃ好きです。無理なさらず頑張ってください! (2021年1月13日 22時) (レス) id: 6dcdb3b145 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年1月13日 20時

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