最終手段。【稲荷崎】

Last resort ・・・２６ ページ28

Aさんside


『(……ここは何処？)』


目が覚めると何故か体育館の外に一人でいた。


陽の光が眩しくて、

体育館の中からは皆がバレーをしてる音が聞こえた。




『(私、さっきまで何をしてたんだっけ。)』


頭の中で必死に記憶をたどってみる。

辿った先にはちゃんと答えが待っていた。


『あ、私深雪ちゃんに突き飛ばされたんだ。』


あの時私は深雪ちゃんに負けた。

主人公(深雪ちゃん)に負けてちゃった。


私死んだんのかな、覚えてないや。

あ、もうどうでもいいんだっけ…………。



でも、ココは何処なの？

そんな質問を空気にしても答えは返ってこない。



だけど、すごく不思議に感じる。

何処か懐かしい気がする。

ならここは私の知ってる稲荷崎……？


｢…………い、おーい、Aー？｣


そんな考え事をしていたら、

後ろから聞き覚えのある声がしてきた。


『……侑？』

侑｢せやで、侑やで。｣


振り返ってそこに居たのは侑だった。


侑｢体調悪いんか？｣


今日は暑いもんなぁ、溶けそうや。

そんなことを言いながら心配をしてくれる。


私はそれに違和感を感じた。


侑 ｢籠持つの手伝うわ。｣

『え、いいの？』

侑 ｢当たり前やろ。ほらさっさと行くで。｣


先を歩く侑の背中を私は追った。

てか、ほぼ全部侑が持ってっちゃったよ…。


治 ｢ドリンク上手っ、ありがとぉな。｣

『え…うん、こちらこそ。』


銀島 ｢片付け手伝うわ。｣

『え、いいの？』

銀島 ｢1人じゃ大変やろ。少しは頼って欲しいねん。｣

『じゃあ、お願いしようかな。』



銀ちゃんの背中を追いながら私は気づいた。


ここが何処なのか、

どうして懐かしく感じたのか、

ここは私の夢の世界。

望んで叶わなかった理想の世界だ。


夢じゃないとこんな事ありえない。

現実のみんなは私のことを必要としてくれない。

誰も私を見てくれない。


でもここは違う、私の願いが叶った夢の世界。

夢なら覚めないといけないのかもしれない。

だけど、


角名 ｢A、いつもありがとう。｣



ここは私にとって居心地が良すぎる。

そりゃそうだよね、夢なんだもん。


私はずっとこのままがいい。

ずっと夢を見ていたい。


だからお願い、夢なら覚めないで。





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