最終手段。【稲荷崎】

Last resort ・・・１３ ページ15

Aさんside


北上 ｢先輩、また最近……。｣

『大変だね。早く収まるといいよね。』



スポドリを作りながら悲しそうな顔をしてるのは

深雪ちゃん。


私がやってるってことにも気づかないで

私に相談してる。



でも、これでいいんだ。


こうすれば居場所は無くならない。

私は深雪ちゃんの部内唯一の相談相手。

その肩書きが欲しかった。


相談に乗ったりしてる所を他の人が見れば……


治 ｢Aは優しいんやね。｣

『そんなことないよ〜。

可愛い後輩が困ってるのに可哀想じゃん？』

銀島 ｢せやな、俺達も練習に集中できるし助かるわ｣

『でしょ〜。』


みんな前より私を必要としてくれる。

こんなことしちゃダメだって分かってるけど、

しょうが無いよね。


作り物みたいな日常でも、

私はそれで楽しいから。幸せだから･･･


それに

こうしなきゃ誰も必要としてくれないもん。



私の深雪ちゃんに対する嫌がらせは、

日に日に悪化した。


その度に深雪ちゃんは相談してくる。

それを見たみんなは褒めてくれる、感心してくれる。


だけど……



北上 ｢あの、最近嫌がらせ減ったんです……！｣

『・・・え？』


ある日突然笑顔で深雪ちゃんは言った。

なんで？

私の嫌がらせは日に日に悪化してるのに

なんで深雪ちゃんは減ったって言ってるの？


誰かが邪魔をしてる････？


嫌がらせが減れば皆は

｢優しい｣とか｢助かる｣とか言わなくなる。


その分


｢山城先輩ってさぁ……｣


部内で私を否定する人達の声はよく聞こえてくる。

そしてまたエスカレート。


だけどまだ、


北上 ｢嫌がらせが最近なくて〜。｣


深雪ちゃんはこう言う。

最近は酷いこともしてきたのに

心が折れない姿を見て歪んだ私はイラついた。



全然上手くいかない

上手くいかないし、私を否定する人は減らない

全部が全部ムカつく。



｢A〜次体育だから外ー。｣

『え、あそっか。』


なんで次が苦手な体育なんだろ。

気分乗んない…



｢どしたん？体調悪いの？｣

『うん、ちょっとね。私保健室行ってくる。』


先行ってて〜と言いながら階段は向かう。

下に行けば保健室、上に行けば屋上。


保健室行くつもりだったけど

保健の先生無理やり体育参加させるし・・・



私はとりあえず自販機でトマトジュースを買い

屋上へと足を進めた。




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