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十八話目 ページ23

烏が鳴き、帰りを促すような空の下________



『何の用だ』



再び妖の世界を離れ、鳥居の前に佇み目の前の男を睨む



警戒のためか、熱を持つ火の玉がチラホラとAの周りに漂っている



意思を持っているのか度々牙を剥いている



『もう帰るんじゃなかったのか』



「監督に無理を言って、私だけ残ったんだ…ただ、本当にもう帰らないといけないけど」



『…そうか』



「…」



『…』



二人の間に沈黙の時間が流れていく



その時を破ったのは



「ごめん」『すまない』



二人同時だった



『…っ、ふ…ふふっ』



「な、何がおかしいんだい?」



『いやぁ…そんなしょぼくれた顔されたら、お前と会えなくなることに拗ねた私が馬鹿らしくてな』



悪戯っ子の様な口を手の甲で隠し、喉を鳴らしながら笑う



少し頬を赤らめ潤いを持った目で郷を見つめた



『はーっ…あぁ面白い…』



一息ついたAはもう一度息を吸おうとするがそれは叶わなかった



それは暖かく、しっかりとした腕で強く包み込まれたからだった



『ちょ、え…ごっ、郷…?』



Aが顔をなんとかあげると一滴、二滴とAの頬を濡らす



「よかった…このまま、後悔しながら…君を想わなければいけないのかと…」



『…私も、酷いことを言ってしまって、後悔していた…狂ってしまいそうだった』



Aは郷の涙を親指でそっと拭う



「…そうだ、これを君に」



取り出したのは少し歪な蜻蛉玉がついた簪



ずっとポケットに入れていたのに汚れなかったのが不思議な程艶があり、透き通っていた



Aはそれを受け取り、軽く纏めた髪に差し込んだ



夕陽を取り込んだ蜻蛉玉は薄いオレンジの光を纏っている



「この前、君に渡せなかったから」



『…意味、教えただろ』



「あ、いやっ、そんな意味じゃなくて」



『ははっ、冗談だよ…ありがとう』



夕陽が後光の様に差し込み、微笑むAを包み込む



逆光が整ったAの顔に妖艶な影を落とした



それはとても幻想的で、物語の中にでも迷い込んだかのようで



郷はどこか懐かしさを覚えた



________________________

生活の間にチマチマ書いてます
生きてます

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作者名:ちくわぶ大明神 | 作成日時:2020年5月16日 0時

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