郷、妖怪に惚れる (ページ21)

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十六匹目ページ21

あの後､暫く仁斗に介抱をしてもらい今はだいぶ回復した

今は縁側で仁斗と一緒にお茶を楽しんでいる

『本当に助かったよ､ありがとう』

「ふふーん！もっと言ってくれていいんだよー？」

胸を張ってふんふんと鼻を鳴らす仁斗がとても可愛らしく､つい頭を撫でてしまう

案外強い力で撫でてしまったのか､髪が乱れたと仁斗が怒ってしまった

私はご機嫌取りのために髪を結う事にした

簪や髪飾りが入った箱を持ってきて､仁斗の後ろに膝立ちになった

私よりも長い仁斗の髪はよく手入れされていてほんのり椿油の独特な香りがする

そんな髪を編み込みしながら小さな花の飾りを差し込んでいく

『しかし､本当に長いな…だけれど綺麗だ』

「でしょー！髪は大事にしなさいってお母さんからよく言われてたんだー！」

『そうか』

お母さまの事が頭をよぎったが､それを表に出せば仁斗に気を使わせてしまう

『…よし､出来た』

最後にお団子にして簪を刺して花と蝶の髪飾りをつければ可愛い町娘の完成だ

うん､我ながらいい出来だ

「すごーい！やっぱりAに結ってもらう髪が1番いいね！」

手鏡を持ちながら私が結った髪を隅々まで見ては飛び跳ねて喜んでくれた

いつも大袈裟な程喜んでくれるが流石に照れるもんだ

「A！ご飯食べに行こ！いつものとこ！」

『はいはい』

そんなに見せびらかしたいか､そんな大層なものではないのに

山を降りて下町に出ると人が一気に多くなる

するとちらほらと仁斗に目が向けられた

「ふっふっふっ…我が親友の結った髪､とくと見よ!」

『恥ずかしいからやめてくれ』

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「たのもぉ！」

『どうも』

「いらっしゃあい､今日も仲良しだねぇ」

いつも出迎えてくれる加々良さんは食事処【川柳】の看板息子で皆から好かれる好青年な白虎だ

間伸びした喋り方は物腰が柔らかく､その見た目からも女子達からは度々黄色い歓声があげられる

「私今日はきつねうどん！」

『私も同じので』

品書きを見るのは面倒臭いので仁斗と同じものを注文する

今日はそんな気分だ

「わかったよぉ」

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「おまちどぉさまぁ」

「わはー！いただきまーす！」

『いただきます』

うん､いつもの美味しさだ

千年前からずっと変わらない

ちりん。

「A？頭の鈴､鳴ってるよ？」

ちりん。ちりりん。