青春うえすと。 (ページ33)

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＊ページ33

「ねぇ、濱ちゃん。」

「ん？」

「これ返したら、終わってまうんですよね。」

そう言うと、困ったように笑った。

「Aちゃん、今日髪綺麗やね。」

「……。」

柔らかく巻いてポニーテールにした髪を触った。

「俺の奥さんも、そんな髪型しとるわ。」

「でも、Aちゃんみたいに綺麗には巻けへんねんなー。」

違うよ。そんなこと言って欲しいんとちゃう。

やだ。行かんといて。

「ほれ、本。」

すでにダンボールにガムテープを貼っていた、彼は私に向かって柔らかい笑顔を浮かべていた。

これからは、この笑顔も奥さんだけのものになってしまうのか。

「……先生。」

本を突き出す。

「ようやく初めての期限内提出やなぁ。」

濱ちゃんはそれを手に取ったけど、なかなか離さない私を待っていてくれた。

いくら先生だと線引きしても、やっぱり好きなもんは好きなの。

先生に奥さんがいたとしても。

「……好きっ…………でした……っ。」

涙で視界が歪んだ。

だめだった。やっぱり遅かったんだよ。

「ありがとう。Aちゃん。」

自分で完結させないと。

過去形で終わらせないと、だめだった。

あぁ、やっぱり好きだよ。
過去形じゃないよ、進行形で。

でも、終わらせないと。

こうしないと、エンドロールが始まらない。

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朝井リョウさん「少女は卒業しない」参考。