青春うえすと。 (ページ29)

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機会を。K,Akito ページ29

炭酸の抜けた、まるでかき氷のシロップのようなメロンソーダを飲んだ。

照史くんは、美味しそうに目の前のステーキにかぶりつく。

こうして、彼の食欲を満たし始めて1時間が経過した。

ダイエットや！なんてゆっくり噛むのを意識するもんだから、よけい時間がかかる。

「…まだ食べるん？」

「まだまだいけるんやけど……ここら辺でやめるべきかなぁ……。」

子犬のような目でそんなことを聞かれたら、「そんなことないよ！」しか言えないって分かってるんだ。彼は。

でも、

「やめるべきや。」

「えぇぇー、」

「ダイエットするんやなかったの？いくらなんでもそんな食べたらお腹壊すで！」

しょぼーん、とバックに文字が出るくらい肩を落とした彼は、なんだか可愛い。

「ファミレス料理なんて、そんな頻繁にたくさん食べたら太るで。」

「じゃー、Aが健康的な料理作ってや。」

コトン、と箸を揃えておいた彼はふざけて笑う私の顔を見た。

「…へっ、あ、うん、いつでもおいでよ。」

「そうやなくて。」

「…え？」

そう言うと、彼は黒い鞄の中から白い箱を出した。

「ほんまは、この前の小旅行んときって思っどったけど、勇気でえへんくて。」

「え、ちょ、照史くん？」

「…あの、俺に毎日ご飯作って欲しい。毎日おはようっていって欲しい。毎日会いたい。

せやから、結婚してください。」

「……うんっ。」

良かった、と涙ぐむ彼から受け取った箱は。

ずっと前から機会を伺って持っていたことがわかるように、少し角が削れていた。