恋の始まり。 H,Jyoitiro ページ16
「あ、Aやん。」
そう呼ばれて振り返ると、クラスメイトの丈がいた。
「あれ、今日部活は?」
休みやねんー、と答えながら自転車に足を引っ掛け、こちらまで来た。
「なんで、エナメルなん?」
「いや、あると思って。」
「相変わらずアホやな。」
うるせぇ、と頭をどつかれると、ふわっといい香りがした。
爽やかな制汗剤が鼻腔を刺激する。
「なに、お前も帰りなん?ちゃりは?」
「自転車の鍵なくしてん。今日はバスや。」
「お前こそアホやな。」
そう言うと丈は、私のカバンを自転車のカゴの中に入れて、「ほい。」と後ろを指した。
「え?」
「え、乗ってかん?」
逆にきょとんとされて、ええの?なんて聞くと俺らの仲やん、と笑顔。
その笑顔が、匂いと重なって余計輝いて見えて。
あぁ、一緒にいたい、なんて柄にもなく。
ゆっくり後ろに跨ると、「危ないやろ。」と手を腰に無理やり置かれる。
なんやねん。
普段ちょけてる癖に、
男らしい筋肉質な背中とか
爽やかな香りとか
気遣ってくれるところとか。
赤い顔を隠すように丈の背中に額をつける。
なんやろ、これ。
「Aさー、文化祭の劇、姫役なんやろー。」
「なんやねん、馬鹿にしとるやろ。じゃんけんで負けてん。」
「ハハッ、馬鹿にしようと思ってたんやけどさぁ、
衣装合わせが思ったより様になってたから、出来ひんくなったわー。」
「うっさい……。ありがとうっ!」
この気持ちがなんなのかって
もう、分かってしまった。
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作者名:栗太郎。 | 作成日時:2016年9月1日 16時