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~始まりの響~ 弐 ページ30

「っは……っは」


森の中をひたすら走る。
あの時のように、何かから逃げるように無我夢中で走り続ける。
木の枝や草で切り傷を作りながらも、大ガマはお構いなしに、全速力で森の出口へと向かっていた。

ー早くここから出て、土蜘蛛を探さねぇと!

秒単位で変わる景色を横目に、大ガマは森を駆け抜けていく。

あれから、師匠と離れた後、大ガマはすぐに走り出し、森の出口を探していた。
ここがもはや自分の知っている場所ではないと言うことを知りながらも、出口を探す他に手段はない。
方位さえも分からないまま、朝日の照らす森をひたすらに走り続けているわけである。


「…っ!見えてきた!!」


走り続けて約5分。
やっと森の出口が見えてきた。
見えてきたのは、薄明かりの街の通り。
ぼんやりとではあるが、木々がそこから途切れている事から、森は続いていないという事が分かる。
大ガマはその吹き抜けた場所にめがけ、倍スピードを上げて走った。


「もう、少し!!」


額の汗を拭うことさえも忘れ、大ガマは全力で走りきる。


「やっと、出口……」


森の草原から一歩踏み出した固い地面で、大ガマはへたれこむ。
森のぬかるんだ地面とは違う、固い感触。
ー森から抜けたのだ。


「っこんなとこで、休んでる暇なんてねぇ……、土蜘蛛を……」


節々の痛む体に鞭を打ちながら、大ガマはふらつく足取りで立ち上がる。
ーその時だった。
突如として聞こえてきた、女性のようにおっとりとした、優しい声。


「あらぁ〜、あなたがAのお弟子さん?」


ゆっくりと後ろを振り返れば、白いふわっとした髪の女性が立っていた。
気配すら感じなかったが、気になるのはそこではない。

ー足が……ない……。

女性には、『下半身』がなかった。
下半身と言っても、上半身のみという訳ではないのだが、上半身から下半身にかけての腹部は、白いうねうねとした煙になっている。
その姿は、煙そのものであった。


「お前……晴明のとこの妖怪か?」


大ガマは警戒するように体制を低く屈めると、威圧するように妖気を放つ。
女性はそれに「ちがうわ〜」っと首をふって、ふふっと微笑んだ。


「さすがAのお弟子さんねぇ、
話には聞いていたけれど、とても強そうな妖気だわ〜」


「A……?お前、師匠の事知ってんのか?」


大ガマは無意識に、眉の間に皺を刻んだ。


「知ってるもなにも、彼女は色々と顔が広いから。知らない子はいないわよ〜?」


「……だいたい想像ついた。」


大ガマは思わず頷いた。

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設定タグ:妖怪ウォッチ , 土蜘蛛、大ガマ , エンマ大王   
作品ジャンル:アニメ
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- リリディアさん» そうなんですか!?少しでも癒やしになってると嬉しいです(*´▽`*)私、宮崎で離れていますけど、遠くからリリディアさんを応援しています!! (2016年6月23日 20時) (レス) id: 31b9002b8a (このIDを非表示/違反報告)
リリディア - 音楽大学の附属中学校に行ってます(^o^)v更新頑張って下さいo(^o^)oおーえんしてます! (2016年6月23日 18時) (レス) id: c27278eda4 (このIDを非表示/違反報告)
リリディア - 学校が国立で、栃木にすんでるんですが、新幹線と在来線でいってます。癒しですよ(*´∇`*)この小説(*´∇`*) (2016年6月23日 18時) (レス) id: c27278eda4 (このIDを非表示/違反報告)
- リリディアさん» バイオリンひかれるんですか!凄いですね!!私、リコーダーさえも吹けないのに!格好いいです! (2016年6月22日 19時) (レス) id: 31b9002b8a (このIDを非表示/違反報告)
リリディア - 更新頑張って下さい!僕もバイオリン頑張りますよ!キリッ( ・`д・´)そのうちYouTubeにだすかもです(^o^)v (2016年6月22日 7時) (レス) id: c27278eda4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2016年5月7日 22時

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