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師匠は語らない 拾八 ページ25

「嬉しいな、私の事を覚えてくれていたのか大ガマ。」


作り笑いのような怪しい笑みを顔に張り付けて、陰陽師、安倍晴明は言う。
大ガマの背筋が凍り付くような恐怖を感じる。


「お前が……、なんで今更……」


「なんで、か。」晴明はそう言って笑う。


「貴様を駆除するためにここまで連れてきたという理由のほかに、何か心当たりあるか?」


「……」


瞬間、大ガマの体から汗が大量に流れ出した。
先程までとはうって変わった、冷たい瞳が睨みつけるようにして大ガマを見ているからだ。

ーこいつが晴明……

晴明はギュッと拳を握りしめて、さらに続ける。


「……貴様があの時大人しく消えていれば、姉上がそそのかされる事もなかった。」


晴明は冷たい目で、さらに大ガマを睨みつけた。


「貴様さえ姉上の目の前に現れなければ、
私は今頃、姉上の望む世界を作り上げていたのだ。」


「それが妖怪がいない世界だって言いてぇのかよ……。」


大ガマが、吐き捨てるように言うと、晴明は高笑いをして


「いや、違う。私が作りだそうとしているのは『人間と妖とのあるべき姿』だ。」


しばらくの間を置いて、晴明は言う。


「つまりは、妖はこの世に不必要。
私と姉上の理想郷に、妖はいらない。」


「っざけんな!!」


晴明の呆れたようなその顔に向けて、大ガマは目にも止まらぬ速さで、右から拳を突き出す。
それは吸い込まれるように、右頬へ流れていき、晴明の顔に一発、重い一撃を食らわせる……はずだった。


「!?」


「弱いな、それが本気か。」


白い短い髪に、赤い瞳に黒い肌。
肌と同じ色のマフラーは、生きているかのように動き、大ガマの右の拳は楽々とその少年の右手によって止められていた。

ー『影オロチ』

晴明が言っていた影オロチと言うのは、恐らく彼のことであり、先程大ガマが捕らえられなかった声の主も、同じく彼だろう。
影オロチの赤い瞳が、真っ直ぐ大ガマを見つめている。


「晴明、こいつは下の地下牢か。」


影オロチの言葉に「ああ。」と晴明は頷いて、


「全ての妖を駆除してから、私が最後に殺す。」


「……わかった、鍵をよこせ」


影オロチの手に晴明はリングに幾つもの鍵がかかった物を手渡す。
しばし、シャラリと心地よい音が響いた。


「おい待てよ!俺はまだあいつに言いてぇ事が……」


大ガマの腕をしっかりと掴んで、影オロチは地下牢への扉を開けた。


「おいって!!……くそっ」


独りきりになった部屋の中で、晴明は微笑んだ。

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設定タグ:妖怪ウォッチ , 土蜘蛛、大ガマ , エンマ大王   
作品ジャンル:アニメ
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- リリディアさん» そうなんですか!?少しでも癒やしになってると嬉しいです(*´▽`*)私、宮崎で離れていますけど、遠くからリリディアさんを応援しています!! (2016年6月23日 20時) (レス) id: 31b9002b8a (このIDを非表示/違反報告)
リリディア - 音楽大学の附属中学校に行ってます(^o^)v更新頑張って下さいo(^o^)oおーえんしてます! (2016年6月23日 18時) (レス) id: c27278eda4 (このIDを非表示/違反報告)
リリディア - 学校が国立で、栃木にすんでるんですが、新幹線と在来線でいってます。癒しですよ(*´∇`*)この小説(*´∇`*) (2016年6月23日 18時) (レス) id: c27278eda4 (このIDを非表示/違反報告)
- リリディアさん» バイオリンひかれるんですか!凄いですね!!私、リコーダーさえも吹けないのに!格好いいです! (2016年6月22日 19時) (レス) id: 31b9002b8a (このIDを非表示/違反報告)
リリディア - 更新頑張って下さい!僕もバイオリン頑張りますよ!キリッ( ・`д・´)そのうちYouTubeにだすかもです(^o^)v (2016年6月22日 7時) (レス) id: c27278eda4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2016年5月7日 22時

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