師匠は語らない 壱 ページ3
「やることねぇな……」
大ガマは1人、縁側で呟いた。
いつもなら、師匠が稽古をつけてくれる時間帯なのだが、あの事件があってからと言うもの、一度も稽古をしたことはない。
夜雲はたまに気を聞かせて家を訪れるくらいで、この広い部屋に1人、大ガマは家を守るようにずっと座り続けていた。
ーこの広い家ん中に、師匠は俺達がくる間、ずっと1人だったんだろうな。
毎日うるさい程に騒がしい家の中も、大ガマ1人となると、とても広く、寒く感じた。
少しばかり寂しさと不安を感じていると、ふいに大ガマの腹が、空腹を知らせるように、ぐぅっと音を立てた。
「……流石に3ヶ月近く何も食わねぇってなると、死んじまうかもな……」
大ガマは内心苦笑しながら、腹をさする。
生きてはいないと言えども、大ガマのように妖気を多く持ち、強い力を持つ妖怪は、体力を大量に使う。
腹も自然と空くもので、寝むる事も、食べる事もせずに、ずっと縁側で座り続けていた大ガマにとっては、辛い事である。
「……でも俺、包丁握った事すらねぇや。」
結局の所は、野山に出向いて、果実や魚を取り、生で食べることになるという、
妖怪よりも、野生児にしか見えない行動をとる羽目になるのだが。
ーあのしかめっ面め……、大事な所でどっか行きやがって……。
「ぐぬぬぬぬ……」
大ガマはあまりの空腹で腹を押さえ寝転がる。そして、何かを森に取りに行こうかと思ったとき、突如後ろから、呆れる声が聞こえた。
「……え、なにしてんの?
あ、ごめん。あれか……女の事情ってやつ?」
「てめっ、夜雲!!
それ謝る所ちげぇだろ!!俺は女じゃねぇ!!」
大ガマは急いで起き上がり、いつの間にか背後をとっていた夜雲に叫んだ。
夜雲は「邪魔するよ。」とだけ伝えると、居間へと歩いていく。
ーくそぉ……、全然気づかなかった。
そんな夜雲に、若干切れ気味に大ガマはついて行くと、ふと、夜雲の包帯が巻かれた腕が目に入った。
「おい、夜雲……、腕、もう平気なのか?」
「ん?……ああ、もう平気。アイツの腕が無駄に良かったから、痛くはない。」
夜雲はそう言って、軽く腕を振った。
痛みは感じないとは言ったものの、腕の傷はまだ痛々しく残っている。大ガマに、心配をかけないように、その傷を隠すように包帯を巻いているのだろう。
「傷はもう大丈夫。
……で、何でさっき転がってたの。」
「……笑うなよ?」
「それは……、話による。」
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♪ - リリディアさん» そうなんですか!?少しでも癒やしになってると嬉しいです(*´▽`*)私、宮崎で離れていますけど、遠くからリリディアさんを応援しています!! (2016年6月23日 20時) (レス) id: 31b9002b8a (このIDを非表示/違反報告)
リリディア - 音楽大学の附属中学校に行ってます(^o^)v更新頑張って下さいo(^o^)oおーえんしてます! (2016年6月23日 18時) (レス) id: c27278eda4 (このIDを非表示/違反報告)
リリディア - 学校が国立で、栃木にすんでるんですが、新幹線と在来線でいってます。癒しですよ(*´∇`*)この小説(*´∇`*) (2016年6月23日 18時) (レス) id: c27278eda4 (このIDを非表示/違反報告)
♪ - リリディアさん» バイオリンひかれるんですか!凄いですね!!私、リコーダーさえも吹けないのに!格好いいです! (2016年6月22日 19時) (レス) id: 31b9002b8a (このIDを非表示/違反報告)
リリディア - 更新頑張って下さい!僕もバイオリン頑張りますよ!キリッ( ・`д・´)そのうちYouTubeにだすかもです(^o^)v (2016年6月22日 7時) (レス) id: c27278eda4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:♪ | 作成日時:2016年5月7日 22時